新規事業開発において大前提に置くことは何か

この記事は、既存事業の柱が5年以上立っていて、新規事業開発を行おうと考えている経営層に対して書いている。

目的が「売上の柱をもたせること」になっていないか?

早速だが、あなたはなぜ、新規事業開発を行おうと考えたのか。

売上の柱を立てることは、一見もっともらしい目的に見えるが、二の次である。

なぜならば、会社の存在意義と照らし合わせて、新規事業開発をする必要があるからだ。貴社の唯一無二の存在意義とそぐわない新規事業開発であれば、それは他の会社でもできるということだから、他社が行えば良い話である。

弊社も、企画人材・新規事業開発人材の教育プログラムを依頼されることがあるが、その際に「なぜ、新規事業を行いたいのですか?」と必ず伺っている。

この質問に対して、自社の経営理念とつなぎ合わせた回答は2割もない。

話を伺い、持ち帰って再度提案をした際に、「そもそもMission,Vision,Valueとつながった新規事業開発が必要だ」という内容を話すと、「その通りだ」という回答をいただけるが、それを本気で実践しようとする会社は、これも2割程度だと感じる。

理由は、そんなところから新規事業開発を考えたら、相当な労力がかかるから、取り組む胆力が必要だと分かってしまうからだろう。だから手っ取り早く、結果を出す道を考えるのが一般的な思考だ。

存在意義から考えるメリットの大きさ

そうは言っても、今の時勢に対して悠長なことを言ってられない。スピードよく売上の柱を作る必要性は当然あるという意見を聞く。

勘違いしないでいただきたいのが、存在意義について話し、新規事業とつなげようとすると、議論スピード感が落ち、更に存在意義に縛られて、アイディアが狭まる恐れがあるというのは、私は逆だと考える。

1つ目のメリットは、自社の存在意義を広くみたり、別の角度から見直すことで、全く違う競合が現れ、差別性が見えることだ。存在意義をデザインし直すことも可能なのだから。

2つ目のメリットは、顧客から見ても差別性がしやすい事業となる。サイモン・シネック氏の動画を御覧いただきたい。

アップルの例を出して、単なるコンピューター会社がなぜこれほどの世界的企業へと変貌を成し遂げたのか?を描いている。

そこには存在意義(Why)から始まるストーリーが隠されていた、という話だ。

前述の通り、顧客に対しても差別性を訴えやすい上に、社員のエンゲージメントも上がる。

会社の存在意義に沿った発信を顧客に行えることで、組織は元気になる。なぜならば、社員は自分が選んだ会社だからこそ、誇りを持ちたいし自慢をしたいからだ。それを語るには存在意義を中心としてサービスをつくらないと、社員にも顧客にも響かない新規事業となってしまう。

新規事業開発の裏テーマ:社員のロイヤリティ向上

既存事業をやりきっていない中で、新規事業開発を行うとする企業は多い。

そもそも既存事業を「やりきる」ができない状態から、「やりきる」ができる状態にすることが、教育としては先決なのだ。

弊社では「Why(存在意義)」を中心として視座を高めていく新規事業開発向け研修も実施している。

新規事業開発を通して、既存事業に対しても、存在意義を見極められる「目」を持った人材を増やしていきたい場合は、ご相談いただければ嬉しい。