仕事を振れない管理職は組織拡大を阻んでいる

管理職研修を行っていると、管理職は「仕事を振らないといけない」ということを、頭で理解しているものの、実際に行っている仕事は「実務」であることが大変多い。そして、管理職の悩みをアンケートにとると、第一位は「部下の育成」という結果が出る。この矛盾を解説しながら、仕事を振れる管理職にさせるためのステップを伝えたい。

管理職の仕事とは

「経営」「管理」「執行」と分けた時に、経営は会社の方向性や目標を決定する役割を持っており、その目標や計画にそって実行するのが「執行」である一般職の役割と言える。だが、人数が増えると、この「経営」と「執行」の役割だけでは成立しなくなる。情報の集約を行う役割がおらず、誰も、目標計画や会社を取り巻く環境の現状を知ることが、できなくなってしまうからだ。目標や計画を執行ベースにブレイクダウンし、現状を管理し、情報を橋渡しする役割が管理職の役割と言える。

では、管理職の仕事とは何か?シンプルに言えば「仕事を振ること」が仕事だ。そうでないと、上記の役割が達成できないからである。しかし、このことを頭ではわかっていながらも、実際には実務をやっているのが実情だ。この矛盾が起きる理由の一つとして、そもそも仕事を振れないことによる大きなデメリットを実感していない事が要素としてある。

仕事を振れないことのデメリット

では、仕事を振れないことへの弊害とは何か?いくつかあげていこう。

組織の成長・拡大を途絶えさせる

もっとも大きな弊害は、これだ。例えば、自分が係長時代に行っていた実務を、課長になっても行っていたら、現在係長になっている部下の仕事は、あなたが平社員のときに行っていた実務をやることになる。そのようなことを、前任の課長もやっていたら、あなたの課長としての仕事は、前任の課長の、平社員時代の実務をやっているのかもしれない。極端な例ではあるが、このように、仕事を抱えると、相手の成長が間違いなく止まる。

そして、本来の役職に応じた仕事ができないまま、時を過ごすことになってしまうのだ。これでは、たった一人に業務が集中するため、組織拡大どころか、「あの人がやってくれるから、自分たちは何もしなくて良いよね」と、ぶら下がり社員が増えて、組織の成長が途絶えてしまう恐れがある。

会社の情報資産の独り占めしている

「相手は忙しそうだから、自分の方でやっておこう(本当は自分の役割ではないんだけど)」という風に考えて、管理職にも関わらず実務をやっている人はかなり多い。一見、優しく頼りがいのある判断にみえるが、これは大きな誤りである。

なぜならば、本来共有すべき、会社の情報資産を独り占めしている状態だからだ。あなたの会社にもイントラネットがあり、部門や役職によって閲覧権限があるだろう。このように、会社の情報資産は、共有されるべき役割に共有されていることで、情報の価値が発生する。

しかしまるで、イントラネットのフォルダに、自分と関係ありそうなタイトルが付けられているにも関わらず、閲覧権限がない状態を部下に作り出しているのが、「自分の方でやっておこう(本当は自分の役割ではないんだけど)」という判断である。

これでは、情報の価値が発生せずに宝の持ち腐れ状態になっている。言葉を強くして言い換えると、共有財産の私物化とも言えるのだ。

部下のモチベーション低下・成長の妨げ

先程も少し伝えたが、仕事を抱えて振らないと、部下のモチベーションは下がる恐れがあるし、確実に成長の妨げとなる。上司が良かれでやっていることでも、部下としては「自分に実力がないからなのか?」「信用されていないのか」などと考える人もいれば「仕事少なくてラッキー」「上司が責任感あるみたいだから、甘えちゃお」と考える人もいるかもしれない。

そのため、一概に部下のモチベーション低下につながるとは言えないのだが、確実に成長の妨げとなってしまう。その部下が次にあなたの役職についたことを考えてみてほしい。例えば、今、振っている仕事量と質で、3年後に部下はあなたの役職につけるだろうか?

未来のことを見据えた時に、部下の成長の妨げは部下のキャリアにも響くし、組織成長という観点から見ても非常にもったいないことをしている。

まとめ:仕事を振るための3段階

では、いかにして仕事を振っていけばよいか。結論を伝えると、下記の三段階で仕事を振れるように変化していく。

  1. 「振らないといけない」と思っているが振れない

  2. 構わず振る

  3. 事実や役割に基づいて振る

もし、あなたの会社の管理職がレベル1や2の状態であれば、マインドセットから具体的なアクションまでをトレーニングし、レベル3へと引っ張っていくので、ご興味があればご連絡をいただければ嬉しい。

仕事の振り方について、より詳しく知りたい方は、こちらの記事もおすすめである。

【上手な仕事の振り方】仕事の振り方をレベル別に分けて解説