明確に意思表示できる人とそうでない人の違い

若手向けの営業力・コミュニケーション力向上・管理職向けのマネジメント力向上・エグゼクティブ向けのコーチングなど、トレーニング対象者が幅広い弊社なのだが、どの階層でも見受けられる特徴があった。それが「相手に対して明確な意思表示をすることを嫌う」ということだ。例えば、上司が部下に対して意思表示することも嫌うし、営業マンが顧客に対して意思表示することも嫌うのだ。加えて、意思表示を嫌う方々にも特徴があり、傾向を見ることができた。明確に意思表示ができる人とそうでない人の違いを整理していく。

自分の判断に責任を持っているか

先に結論を述べると、「自分が判断したことに責任を持てる人」は明確に意思表示ができる人だとわかった。上司から突然言われたタスク、顧客からの新たな要求、同僚から誘われた勉強会、会社の業績からみる中計の策定など、必ず自分がどう考えて決定をし、その理由を自分の中で明確にしておけることが、自分の判断に責任を持っているといえる。

責任を持つ=頑なに曲げないことではない

ここで勘違いしないで頂きたいのは、自分の判断した内容を頑なに曲げないことと、自分の判断に責任を持っていることは違う。自分の中で思い浮かんだ判断のうち「これがベストだよね」と理由付きで、自分で判断したと思えればそれで良い。

そして、相手から別の意見をもらって、迎合ではなくて、理由も含めて納得したならば変えることも自由だ。よく自己決定を曲げないことが責任を持っていると勘違いする事があるが、それはただの頑固な人と変わらない。常に目的に基づいてベストな方法を探す姿勢と、今の自分の実力だとこれがベストだ、と納得していればそれで良い。

しかし、それを自信を持ってこのような事が「できている」といえる方は少ないだろう。続いて、明確な意思表示ができない人の特徴と事例を説明する。

明確な意思表示ができない人の特徴

明確な意思表示ができない人の特徴として「相手の反応が気になっている」点が非常に大きい。自分自身の判断も絶対に正しくないように、相手も同様に絶対に正しくはない。しかしながら、まるで「相手の方が正解で、自分は不正解」と考える人が多くいる。

その観点から考えれば、当然、意思表示をすれば相手に言いくるめられたり、アドバイスを受けてその通りに迎合するしかなくなってしまう。または、反発をしながらも「どうせ自分が間違っているんでしょ」と心の中では悪態をついているのかもしれない。

そのようなプロセスに入る前のアラートとして、明確な意思表示ができなくなる時の例を紹介しよう。下記のような事を常に感じていれば、それは自身の意思表示のセンスを鈍らせている状態なので、ぜひ注意していただきたい。

例1:相手がどう思うのか気になる

特徴にもあげているが、やはりこのポイントは重要視するべきだ。「相手がどう思うのか気になる」のは、確度を変えてみたらとても良いことである。営業の観点で見れば「顧客志向」を考えることになるし、部下との関係でみれば「エンゲージメント」を考えることになる。しかし、気になるポイントが、このような、相手を理解する目的ではないときが要注意だ。

例えば営業で見れば「顧客に嫌な顔をされないか、否定されるのではないか」と不安し、相手が気になっているのであれば、それは自分が怖いから気になっているだけであって、実際には顧客のことは考えておらず、自分の不安という感情を気にしているだけだ。

部下との関係で見れば「仕事を振って断られるのではないか」と不安し、相手が気になっているのであれば、これも同様に自分が怖いから気になっているだけであって、実際には部下のことは考えておらず、自分の不安な感情を気にしているだけに過ぎない。

もし、上記の2つの例のように相手がどう思うのか気になるのであれば、一度立ち止まって考えてみると良いだろう。

例2:相手の依頼を断れない

これも例1同様に、目的によって相手の依頼を断らないこともできるし、断ることもできるわけだが、問題は「断る選択肢がないこと」にある。相手の依頼を断れない理由としては「相手も大変だろうから」「断ったら悪いことになるかもしれないから」という言葉で語られているように、相手に事実を確認しないまま、自分の「◯◯だろう」「◯◯かもしれない」という思い込みで判断をしているからだ。

例えば、営業の値下げ交渉、上司部下の仕事の依頼も「なぜ今交渉するのか」「なぜ今依頼をしたのか」を聞けば、目的がわかる上に、判断をすることが容易になる。

もし、あなたが例2のような状態なのであれば、ぜひ質問をしてみてほしいし、実際に些細な依頼でも、理由をつけて断るシミュレーション練習をしてみるのも良いだろう。しかし、質問することは実は難しいのだ。

まとめ:断る選択肢をするために

意思表示を明確にできる人は、「断る選択肢も断らない選択肢も持っている人」だ。逆に意思表示が明確にできない人は「断る選択肢を持っていない」人だ。

ちなみに、意思表示ができない人は、断ったあとのデメリットばかりが浮かんでくるだろうが、実は断ったあとのメリットが浮かぶ人もいる。断ることにより、仕事の目的を精査することができたり、相手の自社に対する価値を、どれくらいで測っているのかを把握することもできるのだ。

思っているほど、断る選択肢は、怖いものでなく、むしろ歓迎すべき選択肢だということが分かれば、明確な意思表示もでき、仕事自体もはかどるだろう。組織で言えば、実はそれが生産性の向上につながるので、興味があれば一度ご連絡をいただけると嬉しい。