個人と組織のベクトルを一致させるには?

個人と組織のベクトルを合わせることが難しい時代になった。価値観が多様化していない時代は、一定の制度や施策だけで、物事がある程度スムーズに進んでいった。しかし個人の力が強くなっている現代では、個人と組織の力関係が変わってきており、今までのコントロールの仕方では組織のほうが力負けしてしまっている。だからこそ生まれている「共感」「パワハラ防止」「ダイバーシティー」などの流れに、企業は対応していかなければならない。個人と組織のベクトルを一致させるための、弊社の考えを書いてみる。

個人と組織の意思決定の変遷

日本で個人の力が強くなってきたのは、SNSが流行りだしてからだ。

歴史を遡りながら考えてみる。フランス革命のような市民革命から主権を勝ち取った流れがない日本は「お上から与えられた制限ある自由」に慣れている民族だと言えよう。その流れを組み、近代においても護送船団方式(落伍者を出さない主眼からの政策)によって金融機関への神話が作られ、既得権益が守られることにより、高度経済成長を果たした。

しかしそれは、市場経済における自由競争により他より優れた商品・サービスを供給したものが勝ち残るという、本来の資本主義経済になじまない部分があったと指摘されている。バブル崩壊後はご存知の通り、金融ビッグバンが起き、護送船団方式が次々と壊れていったが、現在も残り香がある。

そのような国民性だから「世界で唯一成功した社会主義国家(日本型資本主義)」などと言われるのも無理もない。

話が少し大きく膨らんでしまったが、そんな日本でも個人の力が台頭し始めてきた。護送船団方式が通用しなくなったのだ。すると「自己責任論」や「六本木ヒルズ」といった、個人の成功を称える流れが、ITバブルあたりから生まれ始めた。

そんな時流に発達したUIが、PC・スマホであり、発信ツールとしてのSNSだ。SNSによって個人の発信が、有名企業や有名人を奈落の底へ陥れるようなことができるようになった。また、個人の発信によって給与以上の収入を得られるようなビジネスモデルが生まれている。

多くの人はお金や地位や名誉を得ることが幸せだと感じている。その目的から見ても、以前は「いかに目立たず上から恩恵を受けるか」に注力していた個人が、今は「いかに周りから注目を集めるのか」という点に注力する個人が溢れるようになったのだ。

台頭する個人に振り回される組織運営

すると組織の対応は変わる。以前は、「成果はあまり芳しくないが、会社で残業し、休日は上司や同僚とゴルフに行くような人材」に優しい制度が引かれていたが、今は「会社に定時で帰り、成果はキチンとだし、休日は趣味や副業に没頭する人材」に優しい制度を引くようになった。

当然、現代のほうが組織へのロイヤリティーという名の依存度は、下がっている。そうした意味で、組織が個人を依存させるように上手に制度を引く状態から、個人の尊重によって組織の成長に参加するように促す制度を引くように変わっているだろう。

そこまで工夫をしながらも、なかなか個人と組織のベクトルが一致しないと思っている経営者は多い。それはなぜか。

実はその理由が、管理職の主語が「私」から「組織」に変わっていないことにある。

個人と組織を繋ぐためには?(野球チームの例)

ここに、同じチームのピッチャー、キャッチャーがいたとする。それぞれの課題を出してみると・・

  • ピッチャーの課題:球種を増やす、投球フォームの改善
  • キャッチャーの課題:肩を強くする、牽制球を早く投げる

個々によって課題が違うことがわかる。

では、チームの課題はなにか?それは「試合に勝つこと」にある。

ピッチャーはチームを勝利に導くために、球種を増やす練習をしているし、キャッチャーも試合に勝つために肩を強くしている。このように、ピッチャーもキャッチャーも、チームメンバーであり、一個人でもある。

これは会社でも同じことだ。しかし、野球チームの例が実際の現場でできないのは、個人の欲求を優先してしまうからだ。

野球の話に言い換えるなら、チームが甲子園を目指すと言っているのに、趣味で野球を続けたい個人が隠れている状態だ。更にチームメイトに「そんな甲子園なんて目指さずに気楽にやろうぜ」と周りにけしかけて、自分の欲求をチームの目的に当てはめようとする。それでは、チームの目的とそぐわないから、離れたほうがいいと考えるのは当然だろう。

では、こうした状況への対応策はなんだろうか?弊社でマネージャー育成プログラムを実施した際の、お客様の声があるのでご紹介したい。

主語が変わることで組織と個人はつながる

現在プログラムを進行中のマネージャーの声を掲載する。

環境の変化があったタイミングで、自分の思考や、価値観が変わっていった。そのような時に、月1回のプログラムで、定期的に言語化してもらって、自分の視座の高さや気づきの振り返りが出来ていった。再現性のある気づきがあったと思っていて、偶発的に起こった気付きから、能動的にメンバーに再現性を持たせて設定することができればいいなと思う。会社からこのような機会をもらって、本当にありがたいなと思います。

詳しく話を伺うと、「実は、個人の能力を高めることが市場価値を高めることだと思っており、自分で仕事を抱えてしまっていた」という。「しかしマネージャーとなり、プログラムを通して組織の価値を高めることを一番に考えるようになり、振り返ると、実は組織の価値を高めることが、最も自分の市場価値を高める事だったと気づいた」とのことだった。

まさにこの発言が、主語が「会社・組織」になっていると言える。上記の図でいう、左から右へ主語を移行することができた。

実は、主語の移行が、組織と個人のベクトルを一致させる第一ボタンなのだ。しかし、ボタンをかけ間違えたところからスタートしてしまい、管理職であるにも関わらず「主語が私」になっているため、部下に対して、組織と個人を繋げなくなっている。すると離職者が増え、生産性は落ち、どれだけ制度を整えても問題が発生する。

これが、昨今のテレワークにおける組織と個人の関係性と言えるだろう。つまり、いくら経営者が制度を整えても、現場レベルのコミュニケーションにズレが発生してしまい、本質的には個人と組織のベクトルが一致しないままなのだ。

主語を変えるコンテンツは、どの会社も扱っていない。弊社が持っている唯一無二のサービスであると自信を持って言える。管理職が主語を変えるコンテンツに興味があれば、ご連絡をいただけると嬉しい。