現場に活かす!効果的な営業ロープレのやり方とコツ

もう営業何十年のベテランマネージャーであるあなたには忘れてしまったかもしれないが、営業未経験者にとって、顧客に営業することは、不安でいっぱいだ。弊社も新人〜若手営業マンに営業研修を行うが、多くの営業マンが口を揃えて言うのが「顧客に踏み込んで話ができない」ということである。そんな未経験者・経験年数が浅い営業マンに効果的なのがロープレである。しかしながら、既存のロープレでは補いきれていないポイントがある。どういうことかを、基礎的な知識・既存のロープレも踏まえながら話を進めていきたい。

営業ロープレとは

ロープレの語源は英語のrole-playingであり、直訳すると「役割演技」となる。営業マンと顧客の役割がいないと成立しないため、基本的には2人以上で行う。ビジネス上では、営業における一連のプロセスをシミュレーションした実践型トレーニングを言うことが多い。

なぜ営業ロープレが必要なのか

営業ロープレを行う必要性は多岐に渡るが、今回は特に営業ロープレを現場に活かせる未経験者にフォーカスをしたい。

営業未経験者にとっての必要性

営業未経験者にとっては、基本の型を身につける近道だから、営業ロープレは必須だ。具体的には、以下のような型を身につける事ができる。

営業の流れの経験

営業においては、必ず聞かなければ成果に結びつかない関所のようなポイントがある。その代表的な例がBANTだ。

BANTとは

BANTとは営業における顧客への質問フレームワークだ。以下のことを言う。

B:Budget(予算)

A:Authority(決済権)

N:Needs(ニーズ・需要)

T:Time frame(導入時期)

それらを外さずに一定のトークを展開することが重要だが、上記のような知識については、覚えることでクリアできる。

しかし知行合一をしていくためには、実践さながらの体験が重要になる。そこで事前にロープレをしておくことで、勘所を押さえる近道になるのだ。

フレームワーク話法の経験

営業未経験者が陥りやすいのは「知識がないと話せない」「どうコミュニケーションを取ればよいか分からない」といった悩みに苛まれることだ。

こうした悩みを解消するような、様々なフレームワークが開発されている。代表的なフレームワークとして「SPIN話法」や「応酬話法」がある。少しだけこれらの説明をする。

SPIN話法

まずSPIN話法は、商談を成功させる話法で、顧客の潜在ニーズを引き出すために使うフレームワークだ。

  • S:Situation (状況質問) / ex.御社の近況はいかがですか?
  • P:Problem(問題質問)/ ex.〜となると、この辺に問題意識をお持ちなのでしょうか?
  • I:Implication (示唆質問)/ ex.●●が解決されないと、生産性も落ちていきますよね。 
  • N:Need-payoff (解決質問)/ ex.●●が解決されると、業務効率化が進みませんか?
応酬話法

応酬話法も、商談を成功させる話法で、顧客からの反応に対して切り返しを行う話法のことを言う。様々あるが、ここでは代表的な10個を紹介する。

  • 質問話法:ex.●●についてはいかがですか?
  • 寄り添い話法:ex.確かにそうですよね、一緒に考えさせてください。
  • ブーメラン話法:ex.値段が高いのは、質の良いものを提供しているからです。お客様には後悔させたくありませんので。
  • Yes But法:ex.確かにそうですね。ですが、弊社はこのように考えておりまして・・
  • Yes And法:ex.おっしゃるとおりです。だからこそ〜・・
  • 否定法:ex.心配ありません。ご購入後、アフターフォローも致します。
  • 例え話法:ex.ちなみに、他社様ではこのように使っております。他社様の実績としては〜
  • 黙殺法:ex.ところで〜はいかがですか。
  • 資料転換法:ex.こうした資料があります。ご覧になりますか?

それぞれの話法に意味があるが、細かいところまでは覚える必要はない。こうした応酬話法と呼ばれる発言も、顧客の立場に立てば自然と出るからだ。ハードネゴシエーションになる3つのパターンを記事にまとめているので、そちらも参照されると深まるだろう。

【タイプ別】ハードネゴシエーションが必要になる理由

営業ロープレを行うメリット

以上の経験ができるロープレだが、未経験者にとって、具体的にどのようなメリットがあるかを羅列していく。

現場に近い経験ができる

営業未経験の場合は、突然現場に入っても、クロージングまで営業を進めることは難しいだろう。

実際の商談の場での、振る舞いや話し方、雰囲気を経験できるのは、大きなメリットだ。

商品の理解が進む

見る・聞くだけでなく、話すことを通して、自社商品・サービスの知識が身につく。

基本的な営業トークをする上で、アピールポイントや、顧客に言わなければならないポイントを覚えられる。

成功体験を積める

営業未経験者であっても、営業ロープレによって、成功体験を積むことが可能だ。

なぜならば、顧客がNoをするケースだけでなく、Yesをするケースも作れるからだ。

ロープレが成功した場合、顧客が提案を受け入れた理由を説明することで、成功パターンを体験できる。

結果、営業未経験でも自信を持って話すスキルを身につけることができる。

事前準備の精度が高まる

当然ながら営業未経験者は、実際の顧客を想定して、営業に向けた準備をしたことがなく、考えたこともない。

実際の顧客を想定してロープレを行うことで、事前に準備するべき内容を考える機会ができる。

更に、何度もロープレを繰り返すことで、想定外の質問や状況への対処をすることになる。

その結果、より良い資料や話し方を模索するなど、提案時の改善点を事前に洗い出せる。

現場への不安が解消される

まとめになるが、営業未経験者にとっては、上記の話法を覚えることで、「知らないことへの不安」「顧客から反論された時への不安」が解消される。だからこそ、一連の流れや勘所を抑えるために、ロープレを行うべきだろう。

営業ロープレのやり方

営業ロープレには、大きく4つの種類がある。順番に紹介していく。

ケース型ロールプレイング

顧客の設定を細かくした上で実践するやり方だ。例えば顧客の年齢・性別・年収・法人であれば決済権の有無・役職・営業と会っている目的・Vision・顧客が会社で成し遂げたいこと・課題感などを設定し、顧客が描いているサクセスストーリーを考えてから、行う。

更には、顕在ニーズと潜在ニーズのポイントを設定することで、顧客が話していない部分に質問ができるかを測定することもできる。

このような設定をすると、実践に近い経験を積むことができ、ロープレの質が大きく高まる。

グループロールプレイング

グループを組んで、役割を交換しながら行うやり方だ。研修では、名刺交換・挨拶・来客対応など、一通りの型を覚えるのによく使う方法だ。

営業の挨拶〜クロージングまで、一通りの流れを覚えるのには良いだろう。

また、顧客の役割にもなるので、顧客目線を体験することもできる。

問題解決型ロールプレイング

実際の営業現場で起こっている、もしくは過去に起こった問題を取り上げてロープレを行う方法だ。

より現実的な問題と直面する経験ができ、対処法についても学ぶことが可能だ。

モデリング型ロールプレイング

代表者のロープレを他の営業マンがマネする形式のやり方である。

好成績の営業マンを全員でマネすることで、成約に結び付きやすいノウハウの共有に役立つ。

営業ロープレをするコツ

次に営業ロープレをする上でのポイントを話していく。今までの話をひっくり返すようで恐縮だが、既存のロープレは「覚えること」「知ること」が重要であることを前提に置いてきたが、これは大きな誤りである。

即戦力化のキーワードは「知らない」を武器にする

実は「知らないと売れない」という前提を破壊することが、新人・若手を即戦力化させる大きなポイントだ。

トップ1%の営業マンは、自分は喋らずにお客様の立場に立って話を聞くことが出来るが、99%の営業マンはそれが出来ない。大きな理由の1つとして、日本型の学校教育があると考えている。

受験は「答えを聞いてはならない」が、社会は「答えを聞かなければならない」

日本型学校教育の特徴として、質問に100点の回答を出せる人材が優秀だという前提によって受験制度がひかれている。

制度にどっぷり浸かっていた(つまりは学生時代優秀だった)、新人・若手社員は、社会とのギャップに苦しむ。

その理由が、「知らなかったら答えを聞けば良い」という、テストではタブーだった行動が、実は受注の近道だという事実に直面するからだ。

トップ20%とトップ1%の営業マンの違い

トップ20%の営業マンは、「答えを聞いてはならない」という前提が覆っていない状態で、顧客のニーズを引き出そうとするのが上手い。

少々、雑な言い方をすれば「自社の商品を買う気にさせるようなレールを引くのが上手い」のだ。

ただ前提が覆っていない状態だから「答えを聞いてはならない」状態で、様々な引き出しを持ちながら質問を繰り返す。

顧客は「なんとなく、自分のニーズに合っているし、商品説明ばかりする営業よりは話がわかる人だ」という認識をする。

しかし、トップ1%は、自分が答えを持っていないことを知っている。極端な話、自社の商品も答えではなく、ただの道具にすぎない。

答えは、顧客が潜在的に持っており、商品イメージも顧客が潜在的に持っている。自社の商品はそのイメージと繋ぎ合わせれば良いという考え方だ。

実は、この考え方をマスターしやすいのは、営業イメージがまだない、新人・若手社員だ。

だから、「知らない」を武器にしたロープレを何度も行うことで、受験で培った「相手に答えを聞いてはならない、自分で答えを用意しなくてはならない」という呪いから解けるのが早く、即戦力となるのだ。

新人・若手はケース型ロールプレイングを多用すべき

「知らない」を武器にする経験を積むには、ケース型ロールプレイングが最も効果的である。なぜならば、ケース型ロールプレイングは、顧客の設定を細かく行うことで成立するロープレだからだ。言い換えるならば「顧客の潜在ニーズを引き出さないと成約に至らない」というゴールが明確に設定されている。

よって商品説明の知識が乏しかったとしても、顧客の潜在ニーズを聞くことができるのが、ケース型ロープレなのである。

しかし、何度も言うように、トップ20%の営業マンでも、まるで営業のタブーかのように、「なぜ営業の私に会っているのか?」「商談の目的はなにか?」「他社もいるのになぜうちと会っているのか?」という、顧客のニーズに直結する質問をしない。

その前提を破壊して、「自分は答えを持っていなくて良い」「顧客の立場に立って話を聞く」「顧客から答えを聞く」という前提のコミュニケーションを鍛えるのに効果的である。

現場に活かしたロープレで即戦力を育てる

弊社は新人・若手社員の即戦力化をするための営業研修を実施している。

その際に、彼らから特に多く出てくる発言が「こんな質問をして大丈夫ですか?」という発言だ。この発言が、まさに「答えを聞いてはならない」という日本型の学校教育から抜けられない現状だと感じる。

弊社の営業研修では、実践的なロープレを行うことで、入社2ヶ月目の新人営業マンが「知らないと営業現場に立てないと思っていましたが、知らないことがメリットになることもあるんですね」という発言を残して帰っていった。

その後、人事担当者からは「あの子、営業センスが素晴らしかったですね」と褒めていた。我々が出していた前述の構造についてはご理解いただけなかった様子だ(笑)

それくらい、学校教育から派生した、営業の大前提である「顧客に答えを聞いてはならない」という呪いは強いものだが、それを突破できれば、これからの新時代に大きく羽ばたける営業マンを量産することができると確信している。

ぜひ、そのような新しい営業スタイルを用いて新人・若手社員を即戦力化したいと思っているあなたとお話をしたい。