なぜ、ちゃんと聞いているのに話がズレるのか?IT/SIerの現場で起きる“ヒアリングの誤解”
「話はちゃんと聞いているつもりなんですけどね」
IT/SIerの商談や打ち合わせの場で、何度となく耳にする言葉である。実際、相手の話を遮らず、相づちも打ち、必要そうなことは確認している。それなのに、こんなことが起きる。
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打ち合わせ直後は合意できたと思ったのに、後で話が食い違う
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相手の要望に沿って作った提案が「なんか違う」と言われる
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確認したはずなのに、認識齟齬がなくならない
本記事では、IT/SIer向けの研修で出てきた現場の振り返りログをもとに、「なぜ、ちゃんと聞いているのにズレるのか」を構造で整理する。
目次
ズレの原因は「聞いていないこと」ではない
多くの場合、原因は単純ではない。相手の話を聞いていないわけではないし、質問もしている。しかし、受講者の振り返りを読むと、共通した違和感が浮かび上がる。
「質問はしていたが、あらかじめ用意したことを聞いていただけだった」
「話を深めたつもりでも、実は自分が理解した内容をなぞっていただけだった」
つまり起きているのは、“相手の話を聞く前に、頭の中で整理を始めてしまっている”状態である。
人は無意識に「自分の理解」に置き換えてしまう

話を聞いた瞬間、人は無意識に下記のような変換を行う。
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相手の言葉を
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自分がわかりやすい表現に直し
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「つまりこういうことだな」とまとめる
この行為自体は、仕事を進める上で必要な能力でもある。だが、ヒアリングの場面では、この変換がズレを生む。
「自分の言葉に直した時点で、そこに自分の都合や前提が入り込んでしまう」
「同じ言葉を使っていても、お客さんとこちらで意味が違うことがある」
話が合っているように見えるのに、後からズレが表面化する理由はここにある。
「まとめるほど、相手の本音は消えていく」
IT/SIerの現場では、「要点をまとめる力」は評価されやすい。だが、ヒアリングの途中でそれをやりすぎると、別の問題が起きる。
「まとめた瞬間に、相手の話の中にあった大事な部分が落ちてしまう」
「言い直しや言い淀みの中に、実は一番の困りごとがあった」
相手のニーズは、整理された文章として語られることの方が少ない。
むしろ、
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言葉が揺れる
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話が脱線する
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途中で言い直す
そうした“揺らぎ”の中に、本音が含まれている。
なぜ「ちゃんと聞こうとすると、嫌がられる」のか
ではなぜ「ちゃんと聞こうとする」と嫌がられるのだろうか。実はもう一つ、現場でよく出てくる声がある。
「何度も確認されると、正直ちょっと鬱陶しい」
これは、確認そのものが悪いわけではない。問題は、何のためにその言葉を返しているのかが伝わっていないことだ。
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相手を理解するためなのか
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自分が安心したいだけなのか
この違いは、言葉にしなくても伝わってしまう。目的が共有されていないまま言葉を返すと、相手は「詰められている」「急かされている」と感じやすい。
話のズレが減った人がやっていた、たった一つのこと

研修後、話のズレが減った人たちには共通点があった。それは、解釈を挟まずに、相手の言葉をそのまま返すことだった。
「相手の言葉で返すと、相手が『あ、違うな』と自分で考え直し始める」
「その一言で、話すスピードが一段落ち着く」
これはテクニックというより、姿勢に近い。
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正解を急がない
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先回りしない
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相手が考える時間を奪わない
その結果、相手自身が話を整理し始めるのだ。そして、この経験をすると「おや?」とヒアリングをしていた営業・技術者本人に疑問が湧く。今までに経験したことがないことだからだ。そして改めて「相手の言葉をそのまま返すって重要なんじゃないか」と、自身の立ち位置を考えるようになるのだ。
「質問のうまさ」より「立ち位置」が効いている
多くの人は、「どんな質問をすればいいか」を探そうとする。だが実際に効いていたのは、質問の内容よりも立ち位置だった。
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答えを取りに行かない
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こちらの枠に当てはめない
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相手の中に答えがある前提で聞く
この姿勢で言葉を返すだけで、相手の話の深さが変わる。
なぜ提案が刺さらなくなるのか
ズレたまま話が進むと、最後に必ずここで詰まる。
「言っていることは合っているはずなのに、提案が刺さらない」
それは、提案の質の問題ではない。相手が本当に困っている地点に、まだ辿り着けていないだけである。
仮説が悪いのではない。仮説が、相手の言葉より前に出てしまったとき、ズレが生まれる。
まとめ:ヒアリングは「技術」ではなく「向き合い方」
今回の振り返りログから見えてくるのは、ヒアリング以前の問題である。
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相手の言葉を、途中で整えすぎていないか
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自分の理解を、一度横に置けているか
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相手が考える余白を残せているか
ヒアリングとは、情報を集める行為ではない。相手の思考に、同じ速度で並ぶ行為である。
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