【研修の効果が出ない】現場で変化が起きない5つの落とし穴とたった1つの打ち手とは?

「研修、やったのに効果が出ないんだよね・・」この嘆きは、現場でも経営でも、驚くほど頻繁に出てくる。ここで多くの人が最初に疑うのは、研修コンテンツの質や講師の力量である。しかし実態として、効果が出ない主因は“内容”そのものではないことが多い。研修は「良い話を聞いた」だけでは成果にならない。成果とは、行動が変わり、関係性が変わり、結果として数字や顧客反応が変わることだ。つまり研修は“現場の運用設計”である。

では、何が落とし穴なのか。代表的な5つを挙げる。

落とし穴①:目的が「理解」で止まっている

研修目的が「知識理解」「意識づけ」だけになっていると、現場は変わらない。理解はスタート地点であり、ゴールではない。目的は「現場での再現性」で定義すべきである。

たとえば営業研修なら「明日からの打ち合わせにおいて、必ずメモを取り、その日にメモを取ったか?取らなかったか、それを通して気づいたことは何か?」まで落とし込む必要がある。そこまで「実行」につながるかを追究しない限り、研修は貴社にフィットしない。

落とし穴②:研修が“イベント”になっている

単発で実施し、受講者が良い気分で終わる。これがイベント化である。イベントは盛り上がるが、組織の習慣は変わらない。

行動変容は、①小さな実践②振り返り③再挑戦 の反復でしか起きない。研修は「前後設計」が9割である。そして、この設計を一度で100%作ろうと思ってはいけない。複数回を開催するような研修であるならば、目的と実際の研修が、合致しているのかを検証しながら進むべきだ。

落とし穴③:上司が“見ていない”

現場で変化が起きるかどうかは、受講者本人のやる気より、上司が何を観察し、何を問い、何を承認するかで決まる。上司が「研修どうだった?」で終わらせると、研修は終わる。

上司が「明日から何を変える?その変化はどう見分ける?」と問えば、研修は始まる。管理職の関与は、研修効果の増幅器である。

落とし穴④:評価・仕組みが旧来のまま

例えば研修で「顧客の本音を引き出しましょう」と言っても、評価が「提案数」「訪問数」「スピード」だけなら、人は元に戻る。本当に戻るのだ。

それは、人は“評価される行動”を繰り返すからである。研修効果を出すなら、評価指標を少しでいいからズラす必要がある。たとえば「提案前のヒアリング記録の質」「仮説の更新回数」「顧客の発言量」など、“変化を促す指標”を入れるべきだ。

落とし穴⑤:問いが足りない(答えを教えすぎる)

研修で最も危険なのは、受講者が「正解を覚えた気になる」ことだ。現場は毎回状況が違う。必要なのは正解の暗記ではなく、状況に合わせて問い直す力である。研修の設計思想は「答えを渡す」より「問いの型を渡す」に寄せるべきである。問いが残れば、現場で思考が続く。

例えば弊社であれば「メモを取ること」を宿題として出す。「なんでそんな事をする必要があるんだ?」という問いを持ちながら、宿題を続けていく。そうすると、意味と行動が繋がってくるのだ。少しの答えを与えることは大切だが、問いを残して置かなければ人は成長しない。

さて、ここまで5つの落とし穴を紹介してきたが、ご納得いただいているだろうか。もし共感する点があれば、次に進んでほしい。では打ち手は何か。結論はシンプルに1つだけを行えば良い。

成果定義を行動にする(誰が・いつ・何をするまで言語化)

5つの落とし穴を克服するためには、たった1つの事を行えば良い。それは、成果定義を“行動”に落とし込むことである。

そのために研修設計は、具体的に現場で使えるレベルで宿題を簡素化・シンプル化しなければならないと弊社は考えている。なぜならば、習慣化できる内容でない限り、成果定義を行動に落とし込むことは出来ないからだ。

そのためにも、下記の質問に答えてみてほしい。

問1:そもそも研修を行うに至った現場の課題はなぜか?

「経営課題」ではなく「事業課題」や「現場の課題」であることが重要だ。弊社は事業部長とのお付き合いが多いのだが、その理由は、「現場と繋がった研修」にこだわっているからだと自負している。

逆に言えば、人事部長とお付き合いすることもあるのだが、その人事部長は「事業課題」や「現場の課題感」を事業部長にヒアリングをしながら、我々と事業部長をつなげ、その上で研修を行っている。そのような人の設計も含め、現場の課題感を浮き彫りにしながら、研修を行わないと始まらないのだ。

問2:現場の課題が「解決したと言える基準点」は何か?

いつまで経っても終わらない歴史認識問題ではないが、課題というのは山程ある。しかし、どこかで「解決した」という区切りをつけない限り、この課題は積み上がっていく一方だ。だからこそ、自社内で「これで解決したと言える」という基準点を設けなければならない。これが「成果定義を行動にする」という意味だ。

例えば、IT/SIerの企業であれば、「御用聞きの常態化」が課題なのであれば「周囲から“前よりも質問するようになった”などの前向きなコメントがあれば解決とする」「競合の発注を自社に1件引っ張り出した」など自分たちで納得する基準を作ると良いだろう。

問3:問2を達成するために、何のマインドセットとスキルセットが必要か?

ここまでくると、実行したい内容や、身に付けさせたいマインドセット・スキルセットが見えてくる。研修会社に依頼しても、あまりズレてくることはないだろう。

なお、弊社は、上記のような整理を壁打ちをしながら行っているので、クライアントとのズレが少なく、ズレがあったとしても修正をしながら進んでいく。そのため8年目を迎えるがクレームは0件である。


いかがだっただろうか?研修の効果が出ないのは、受講者が悪いのでも講師が悪いのでもない。多くの場合、研修が「現場に実装される前に終わっている」だけである。研修を“イベント”から“現場課題・事業課題に即して実装”へ。

ここを変えれば、同じ研修でも成果は出始める。研修とは、変化の起点ではなく、変化の運用設計そのものだからである。

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