IT/SIer営業が2回目訪問で話すべきこと|顧客の予算・時間軸を自然に引き出す3つの問い

「2回目の訪問、何を話せばいいかわからない」

IT/SIerの営業現場で、こういった悩みをよく聞く。初回は自社紹介や顔合わせで何とかなる。しかし2回目以降、何を持っていけば相手が会ってくれるのか。何を話せば関係が深まるのか。ここで詰まっている営業担当者は多い。

なぜ2回目に詰まるのか、その構造的な原因については別記事で整理した。

本記事では一歩踏み込んで、「では2回目で実際に何をするか」という行動レベルの話をする。

なぜ2回目が「また自社紹介」になってしまうのか

研修の現場で受講者に振り返ってもらうと、共通するパターンが浮かび上がる。

「打ち合わせ時間の半分以上、こちらの紹介をしていた」「一発で決めに行って、ダメだったら足が遠のいてしまった」「お付き合いのあるお客さんには行けるが、新規のお客さんへの2回目をどうすればいいかわからない」

これらに共通しているのは、訪問の目的が「売ること」になっていることだ。売ろうとするから、自社の話をする。自社の話をするから、顧客には刺さらない。刺さらないから、次の約束が取れない。

2回目訪問の本当の目的は、売ることではない。「この人とまた話したい」と顧客に思ってもらうことだ。そのために必要なのは、顧客の状況・計画・時間軸を理解しようとする姿勢である。

2回目訪問で引き出すべき「3つの情報」

IT/SIerの顧客は、意思決定が「定期」と「不定期」で動いている。年度予算・中期計画のタイミングという定期の波と、突発的なトラブルや案件という不定期の波がある。

この波のどこに今の顧客がいるかを把握することが、2回目以降の訪問で最も重要な仕事になる。そのために引き出したい情報は、大きく3つだ。

① 顧客の予算・計画スケジュール

「一番知りたいのは、お客さんの予算が決まるタイミング、新しいことができるタイミング」という声は、研修受講者から必ずと言っていいほど出てくる。

ただし、これをいきなり聞くことはできない。関係性がない状態で「御社の予算スケジュールを教えてください」と聞いても、警戒されて終わる。

まず入り口として有効なのが、「変化」を聞くことだ。「最近、社内で何か動きはありますか?」「組織や体制で変わったことはありますか?」という問いかけから始め、変化の話が出たら「それはいつ頃から?」「次の変化はいつ頃になりそうですか?」と時間軸を聞いていく。変化の話は比較的しやすく、そこから自然に計画・予算の話につながっていく。

② 意思決定者と意思決定のプロセス

IT/SIerの案件は、一人の担当者が決めることはほとんどない。複数のステークホルダーが関わり、稟議・承認というプロセスを経て動く。

「究極は、意思決定が誰のものかがわかるのが理想」という言葉が研修の中で出た。担当者と話せていても、その上の意思決定者が誰で、どういうプロセスで承認が下りるのかがわからないと、商談はいつまでも前に進まない。

2回目訪問では、直接聞くのではなく、会話の流れの中で「この案件、どなたが最終的に決められるんですか?」「社内での検討はどういう流れになることが多いですか?」という問いを自然に挟んでいく。

③ 顧客が今「何を考えているか」

予算や意思決定プロセスよりも、実は最も重要なのがこれだ。

「困りごとはいつまでに解決したいか」「試作はいつから開始するか」という具体的な話ができる関係は、ある程度の信頼関係が前提になる。しかしその手前の段階でも、「相手が今何を考えているか」を理解しようとする姿勢そのものが、信頼を生む

業界全体の動きを共有する、他社で起きている変化を整理して伝える、顧客の立場を言語化して返す。こうした行動が「この人と話すと、自分たちの考えが整理される」という感覚を顧客に与え、3回目・4回目の訪問につながっていく。

「2回目に会ってくれる人」と「会ってくれない人」の違い

研修の中でこんな議論が出た。「人事異動のご挨拶とか、年末のタイミングとか、フックを作って2回目に行こうとするけど、会ってくれる人と会ってくれない人がいる。何が違うんだろう」

この違いは、フックの話ではない。1回目の訪問で、相手の中に「続きを話したい」という感覚が残っているかどうかだ。

1回目で自社の話しかしていなければ、2回目のフックをどう工夫しても刺さらない。1回目で相手の話をしっかり聞き、相手の状況を理解しようとしていれば、「また来てほしい」という空気が自然に生まれる。

逆に言えば、2回目が取れないと感じているなら、見直すべきは2回目の準備ではなく、1回目の過ごし方かもしれない。

「一発で決めに行く営業」から抜け出すために

研修受講者の中に、こんな気づきを語った人がいた。

「大手・中堅企業を相手にした長期関係構築型の営業をしているつもりだったが、具体的には一発で決めに行く、短期完結型の動きだった。打ち合わせ時間の半分以上はこちらの紹介で、一発で決めに行っていた。一発で決まらないから、足が遠のいて、顧客への理解が深まらない。だから2回目に行く理由がなくなる」

短期完結型の営業と、大手・中堅企業を相手にした長期関係構築型の営業の最大の違いは、時間軸と関係性の深さにある。大手・中堅企業の顧客は、意思決定に時間がかかる。予算は計画に基づいて動き、複数のステークホルダーが絡む。「今すぐ決める」ことはほとんどない。

だからこそ、1回の訪問で結果を出そうとするのではなく、訪問のたびに顧客理解を深めていくという積み重ねが、最終的な受注につながる。

まとめ

2回目訪問で話すべきことは、自社の新しい情報でも、改めての提案でもない。顧客の予算・計画スケジュール、意思決定のプロセス、そして今何を考えているかを理解することだ。

それは一度の訪問で全部わかるものではない。毎回の訪問で少しずつ解像度を上げていく。その積み重ねが、「何かあればあの人に相談しよう」という第一想起につながっていく。

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この記事を書いた人

吉川健一

吉川 健一

取締役/講師

IT業界の提案力・ヒアリング力向上を専門とする講師。技術者としての現場経験と、登壇100回以上の研修実績をもとに、「なぜ提案が刺さらないのか」を構造から解説する。現場で再現できる対話設計をテーマに執筆中。

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