8割合ってる研修が、一番中途半端である──「悪くないのに、何も変わらない」育成の正体

「今回の研修、8割くらいは良かったですよね」人材育成の現場で、非常によく聞く言葉である。否定でもなく、称賛でもない。どこか“安心”を含んだ、この評価。なのだが、実はこの「8割合ってる」という状態こそが、育成を最も停滞させやすい危険なゾーンである。

なぜなら、8割合っている研修は、

  • 大きな不満が出ない

  • 明確な失敗にも見えない

  • だからこそ、原因が検証されない

という特徴を持つからだ。結果として、研修は繰り返され、育成は前に進まない。もしこの話に頷いたり「ギクッ」としたならば、ぜひ続きを見に行ってほしい。

なぜ「8割合ってる研修」が量産されるのか

8割合ってる研修は、偶然生まれるものではない。むしろ、非常に合理的なプロセスの中で量産される。

  • 多くの会社に使える汎用カリキュラム

  • 過去の成功事例をもとにした構成

  • 階層別・テーマ別で整理された設計

これらは、研修会社にとっても、導入企業にとっても「安全」である。

  • 実績がある
  • 説明しやすい
  • 失敗しづらい

その結果、「大きく外れない研修」が生まれる。それが、8割合っている研修だ。だが、育成に必要なのは「外れないこと」ではないことはあなたも薄々気づいているだろう

残りの2割に、現場の“痛み”がある

8割合っているということは、2割は合っていないということでもある。

この2割は、たいてい次のような部分だ。

  • 自社特有の業務プロセス

  • 現場特有の人間関係

  • 過去の成功体験や失敗体験

  • 上司と部下の微妙な距離感

つまり、現場のリアルそのものである。そして皮肉なことに、人が行動を変えるかどうかを左右するのは、この2割の方である。我々も育成現場をみてきているが、この2割の接合が弱い場合と強い場合で、圧倒的に成果が変わる。我々としては、この2割をつなぐ努力をするものの、外部からの努力だけでは、推進力も1倍であり、社内の育成体制がこの2割に注力していると、成果達成へのスピード感は大きく違う。

8割の「分かる話」は納得を生む。しかし、2割の「自分たちの話」でしか、行動は変わらない。

なぜ8割研修は“次につながらない”のか

8割合っている研修は、終了後の会話も似通っている。

  • 「内容は良かったよね」

  • 「一般論としては納得」

  • 「あとは現場でどう活かすかだね」

一見、前向きに聞こえる。だが、ここには決定的な欠落がある。「何を変えるか」が決まっていないのである。

  • 誰が
  • どの場面で
  • どんな行動を変えるのか

これが定義されていないまま研修が終わるため、フォローは抽象論になり、やがて消える。

結果として、

悪くなかった

でも、特に変わらなかった

という、最も扱いづらい評価が残る。

8割研修が引き起こす「研修ジプシー化」

8割研修の怖さは、次の行動を誤らせる点にある。

成果が見えないと、組織はこう考える。

  • まだ足りないのかもしれない

  • 別のテーマも必要なのでは

  • 他社は何をやっているのか

そして、

  • 研修を追加する

  • 研修会社を変える

  • カリキュラムを組み合わせる

こうして、研修は増え続ける。だが、育成の構造は変わっていないため、結果も変わらない。

これが、いわゆる研修ジプシーである。

8割研修の問題は「足りない」ことではない

ここで、よくある誤解がある。

「8割しか合っていないなら、残り2割を別の研修で補えばいいのでは?」

しかし、それは逆である。

問題は「足りない」ことではない。最初から、2割を見にいっていないことだ。

  • なぜ、この会社ではこの行動が起きないのか

  • なぜ、分かっているのにやらないのか

  • どこで詰まり、誰が止めているのか

これを見ないまま研修を重ねても、8割が9割になるだけで、現場は動かない。

100%に近づける方法は、研修を変えることではない

では、どうすればいいのか。答えは、研修内容を増やすことでも、完璧なプログラムを探すことでもない。

現場の2割を先に言語化することである。具体的には、以下の問いから始める。

  • 今回、変えたい“たった一つの行動”は何か

  • それが変わったと、どうやって分かるのか

  • 誰が、その変化を日常で見るのか

この問いが先にあれば、研修は8割でも十分に機能する。なぜなら、残り2割を運用で埋められるからだ。

研修会社の差は「残り2割」の扱い方に出る

最後に、研修会社の違いは、カリキュラムの完成度では出ない。

  • その会社の文脈を、どこまで掘ろうとするか

  • うまくいかなさそうな部分を、避けずに扱うか

  • 「それ、現場だとどうなりますか?」と聞いてくるか

残り2割を“面倒がらずに見る会社”かどうか。そこに、決定的な差が出る。8割合っている研修は、悪くない。だが、それだけでは人は動かない。育成を前に進めたいなら、まず見るべきは「足りない部分」ではなく、見ようとしてこなかった2割である。

いかがだっただろうか?まずは自社が「残り2割」も見ようとすることからスタートする。その意識があれば、自ずと出会いたい研修会社が見えてくるはずだ。我々が、あなたにとってその一社であれるのならば、とても嬉しい。

あわせて読みたい:残りの「2割」を埋め、現場を変えるために

  1. 【構造】[研修の効果が出ない] 現場で変化が起きない5つの落とし穴とたった1つの打ち手とは? (「8割正解」の研修がなぜ現場に届かないのか。その裏側に潜む構造的なミスと、学習を「行動」に変換するための決定的な方法について解説しています)
  2. 【本質】人材育成がうまくいかない会社に共通する「研修以前」の問題 (研修の「中身」を議論する前に、組織として整理しておくべき「土壌」の話。現場が研修を自分事として捉え、自律的に動き出すための仕掛けについて学べます)
  3. 【解決策】研修会社は「小回り」で選べ。現場にフィットする会社の見分け方7選 (「8割の正解」を「10割の成果」に変えるには、研修を現場に合わせて調整し続ける「運用力」が不可欠です。パートナー選びで失敗しないための具体的な基準を提示します)