「聞けてるでしょ?」から「ほんとに、聞けてた?」へ――F社エンジニアが挑んだ“聞く力”の再構築プロジェクト
どのような支援を通じて、どんな変化が生まれたのか?
ここでは、現場とリーダーが動き出したリアルな変化の物語をご紹介します。
ITコンサルティングF社 IT技術者向けヒアリング力向上研修
要件 |
業種:ITコンサルティング企業 F社 |
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期間 | 6ヶ月 |
成果・ハイライト
- エンジニア層に「顧客視点で聞く」文化が浸透し、対話力の底上げを実現。
- 実践型ヒアリング力の向上により、案件拡大に向けた新たな機会を獲得。
- 「聞く力」を武器とする意識が芽生え、社内外のコミュニケーション質が着実に向上。
レポートReport
第1章:「“聞けているつもり”の壁から始まった」
F社では、上場準備を背景に、これまで特定のキーマンが担ってきた顧客対応を、より組織的に広げていく必要が出てきた。
その中で浮かび上がったのが、「技術者のヒアリング力」だった。
対象は、顧客と直接対話する立場のエンジニア層。顧客からの要望を聞き取り、調整を行う場面で、提案のズレやすれ違いが目立つようになっていた。
実際には、「次はこういうことをやってみたいんだけど・・」という漠然とした顧客の要望に対し、詳細な設計・見積もりを勝手に準備してしまう――そんな“独自性の強い対応”が繰り返されていた。
ベテランCTOを中心に、自信と責任感のある技術者たちが揃っており、「自分たちはある程度わかっている」という前提が強かった。そのため、“ヒアリングとは何か?”という問いそのものが存在していなかったとも言える。
第2章:「ヒアリングを“武器”として使えるようになる」までのプロセス
本研修では、「エンジニア脳から顧客脳へ」のシフトをテーマに、以下のスキルを中心にトレーニングを実施した。
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オウム返し:顧客の話を正確に捉え、共感を示しながら深掘りする
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時間軸で聞く:過去・現在・未来を意識し、課題の本質を整理する
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役職・役割の視点で聞く:相手の立場や責任を考慮した質問を行う
これらのスキルは、業務の中で活用される場面に応じて、「どこで使えるか?」を明確にしながら実践。
ただ、顧客との折衝よりも、部下との評価面談や社内会議といった“対社内”の場面でスキルが活かされたという声が多かった。
「どうヒアリングすれば相手の核心をつけるか分からなかったけれど、オウム返しや時間軸で聞くことで、相手の反応が明らかに変わった」
――そんなフィードバックも印象的だった。
第3章:「自分の聞き方で、組織の伝わり方が変わる」
研修後半には、「ヒアリングって、“武器”として使えるものなんですね」という声も聞かれるようになった。
特に、熱心に取り組んでいた数名の技術者からは、「質問を変えると、相手の話の深さが変わる」といった実感が語られ、社内外の調整の質が向上した。
実際に、ある顧客との対話ではヒアリングによってニーズを深く理解でき、案件の拡大につながる足がかりが生まれたという報告もあった。
一方で、組織全体としては“学びを行動につなげる”文化がまだ育ちきっておらず、研修が“お勉強で終わる”懸念も感じられた。
まとめ:「聞けてるつもり」から始まった問い直し
F社のエンジニアにとって、この6ヶ月は「聞き方の棚卸し」をする時間だった。
自分たちは「聞けているつもりだった」――でも、いざ振り返ってみると、顧客の“言いたいこと”にたどり着けていないことに気づく。
ヒアリングは、スキルであり、武器であり、信頼構築のための入口でもある。
Relation Shiftは、こうした“聞く力”を育てたい組織とともに、技術と人の橋渡しを支えていく。