「作業員で何が悪いの?」──問いに出会ってから始まった、2年の変革ストーリー
どのような支援を通じて、どんな変化が生まれたのか?
ここでは、現場とリーダーが動き出したリアルな変化の物語をご紹介します。
物流支援システム企業Z社 意識改革+業務改善支援コンサルティング
要件 |
業種:物流支援システム企業 Z社 上場区分:東証スタンダード市場 年商:1〜99億円規模 目的:意識改革を基盤とした業務改善支援 |
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期間 | 2年間(継続中) |
成果・ハイライト
- 本部長のコーチングを起点に、現場の「作業員マインド」から「設計者マインド」へ組織全体が変化。
- ある事業所では、管理職が現場を離れ「新規案件の受注体制」を構築。創業以来初の新規案件を受注。
- 2年で全体の6割以上が“営業視点での業務設計”に転換。成功事例の仕組み化と社内展開が進行中。
レポートReport
はじめに:変革の起点は、1人の本部長の“問い”だった
「このまま、自分たちの事業部がコストセンターになっていったら、会社に必要とされなくなるのではないか──」
Z社の事業本部長はそう語った。
Z社の中核であるアウトソーシング部門では、物流システムを自社で開発・運用し、実働部隊として顧客とやり取りをしていた。しかし当時の状態は──
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管理職も現場に入りっぱなし
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工数管理・目標管理すらままならない
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顧客折衝ができる人材が限られている
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「イレギュラー対応だから仕方ない」という思考停止
そんな状態に対し、本部長ひとりが「このままではまずい」と危機感を抱えていた。
フェーズごとの変化(全体テーマ:自律型人材の選抜)
第1期:基礎研修(2023年春〜)
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「自分たちの仕事は、営業がなくても勝手に来る(状況A)」という前提が当たり前だった
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研修では、「状況A / B(営業をしないと仕事が入らない) どちらで仕事をしているか?」を問い、全体の認識を揺らがせた
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本部長へのコーチングもスタート(当時は“1人で悩む”状態)
第2期:基礎+応用研修(2023年秋〜)
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応用研修では、選抜メンバーに対し「状況Bに基づいたタイムマネジメント」を徹底支援
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本部長の仲間が増え、部門を超えて連携が芽生えた
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成果:選抜メンバーのひとり(ある事業所の部長)が、現場を抜けて「新規受け入れ体制」を構築し、事業所として創業以来初の新規案件受託に成功
第3期:基礎+応用+実践(2024年春〜)
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応用2期生が、成功拠点の“コピー”を目指し実践研修へ
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全体の6割以上が「状況B」で業務設計を行うように変化
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本部長は少しずつ現場を手放し始め、“育てる側”の役割へ移行
第1期:「作業員の何がいけないんですか?」
2023年春、まずは基礎研修を実施。「状況A(営業せずとも仕事が入る)」と「状況B(営業しなければ仕事が入らない)」という2つの環境モデルを提示し、今の自分たちはどちらの前提で働いているか?という問いを投げかけた。
当初、受講者たちから返ってきたのは、「作業員で何がいけないんですか?」「自分たちの役割は現場で動くことだったはずだけど・・今は違うんですね(納得してないけど)」という反応だった。
本部長のコーチングも同時にスタート。最初は“1人で悩む”状態だったが、コーチとの対話を通じて、仲間を増やすために、自身が「やりたくないけど、本当はやらなければならないこと」に対して優先順位をあげて、果敢に進んでいった。
第2期:「仕事を振るべきだと分かっているんですが…」
2023年秋、基礎研修に加えて、選抜メンバーによる応用研修が開始された。テーマは「タイムマネジメント」。
選ばれた6名には、自分の時間の使い方を徹底的に可視化し、「現場に入らずマネジメントに集中するにはどうすればいいか?」を考え抜いてもらった。
その中で、「仕事を振るべきだと頭ではわかっているけど、任せるのが怖い」という葛藤も多く語られたが、実際に仕事を任せてみると「相手も快く引き受けてくれました」という声が上がり、現場からの脱却が着実に進んでいった。
そんな中、1期から参加していたある事業所の部長が「現場には入りません」と宣言。本部長の構想を受け取る形で、「新規受け入れ体制の構築」を掲げ、実際に創業以来初の新規案件受託を実現した。
この動きは社内に大きな衝撃と希望をもたらした。
第3期:「成功例をコピーするって、どうすればいいの?」
2024年春、研修は第3期へ突入。応用研修に加えて、成功事例を水平展開するための「実践研修」が始まった。
先述した、ある事業所の成功拠点の“コピー”を目指し、参加メンバーは「自分たちの現場で同じことを実現するには何が必要か?」をディスカッションを通じて深めていった。
「成功例をコピーするといっても、どこまでマネすればいいのか分からない」「自分の事業所のクセが強すぎて、うちでは無理かも」──そんな声もあったが、対話を通じて一歩ずつ解像度が高まっていった。
この頃には、全体の6割以上の社員が「状況B(営業をしないと仕事が来ない)」前提で業務設計を行うように変化していた。
番外編:本部長コーチングの歩み
Z社の変革の裏には、常に1人の“問い続けるリーダー”の存在があった。
それが、事業本部長である。
第1期、彼は孤独だった。
「このまま、自分たちの事業部が“作業員集団”のままでいいのか」
そんな問いを胸に抱え、1人で悩み、考えていた。現場に入り込む課長や部長たち、自らも現場を離れられない日々。変えたいと思っても、どこから手をつけていいのか分からなかった。そんな彼が、Relation Shiftのコーチングを受け始めたのが変化の起点だった。構想は少しずつ言語化され、「組織で変えていく」というイメージが浮かび始めた。
第2期には、共に変化を推進する仲間が現れた。
同じ危機感を持ち、研修を通じて意識が変わりはじめた数名のリーダーたち。中でも1人は、「現場には入りません」と宣言し、自らの手で新規案件を受け入れる体制を築きあげる。それは、Z社の歴史において初の快挙だった。そして本部長は確信する。「これは、いける」と。
第3期には、本部長自身の立ち位置も変わってきた。
これまでは“ひとりで火を灯す人”だったのが、“火を広げる人”へと移行していった。
彼は現場を少しずつ手放し、「育てる側」の視点で、組織の次の担い手を育てることに意識を向け始めた。メンバーたちも状況Aではなく“状況B”を前提とした動きを当たり前と感じるようになっていた。
そして今、本部長は営業本部長として、新たなフェーズへと歩みを進めている。
第4期では、これまでの自分と同じように「変えたい」と願うアウトソーシング部門の部長と共に、コーチングを実施し、営業とアウトソーシングの連携強化を深め、自身が構想しているモデルへと、自らの変化と共に歩みを進めている。
本部長の問いの進化は、そのままZ社の変革の進化だった。
問いが深化するたびに、組織が変わる。個の気づきが、文化になる。
それを可能にしたのは、「問い」を手放さなかった一人の姿勢だった。
成果とこれから
あの頃、当たり前のように(けれども言葉にはしないが)聞こえていた一言があった。
「作業員で何が悪いんですか?」
そこから2年――。今、Z社には明らかに違う空気が流れている。
自ら考えて動く社員が増え、メンバー同士で「この設計は妥当だろうか?」「今の運用は改善できないか?」という会話が、現場のあちこちで自然に生まれている。
特に、先行して成果を出した事業所では、「社員は現場の作業者ではなく、設計者である」という意識が浸透しつつある。かつて現場に入りきりだった課長が、今では工程や人員計画を俯瞰して見渡すようになったのだ。
その成功事例を、他拠点へと広げていく──それが今のZ社の挑戦だ。
コピーではなく、再現性ある“仕組み”として展開するには何が必要か。各拠点のクセや事情も違う中で、共通言語を持つために、研修・ディスカッション・対話の場を重ねている。
この“変化の連鎖”を支えているのは、他でもない、本部長のコーチングだ。
第1期では、たった一人で「このままじゃいけない」と問いを抱えた。第2期では、その想いに応える仲間が現れた。そして今、本部長は営業本部長という新たな立場から、次世代に“問いの火種”を渡そうとしている。
彼の問いの進化が、そのままZ社の文化の進化であり、組織の未来そのものを形づくっている。
Relation Shiftは、これからも問いのそばに立ち、組織に“育つ力”が宿る仕組みをつくり続けていく。