否定される営業の特徴は「妄想」が勝っていること
営業トレーニングの現場では、「お客さんの反応があまり良くない時ってどうすればいいですか?」「お客さんが乗り気じゃない時ってどう対応すべきですか?」といった質問がよく寄せられる。一般的な営業トレーニングでは、応酬話法やSPIN話法などを駆使して、悪い反応を良い反応に変える方法を学ぶが、本当に顧客が「良くない」や「乗り気じゃない」状態なのかは、顧客に直接聞かなければ分からない。しかし、多くの営業パーソンは、実際に聞くことなく、自分の判断でそのように決めつけてしまうことが多い。これはスキルの問題ではなく、マインドの問題であり、このマインドをどのように解決すべきかを解説する。
否定的な反応は自分の妄想から生まれる
営業のロールプレイングトレーニングの中で、非常に興味深い事例があった。ほぼ同じ提案内容を伝えているにもかかわらず、顧客役(ロープレなので講師)の反応が異なるのだ。Aさんはゴールである契約を勝ち取り、Bさんはそうならなかった。撮影した動画を見直すと、両者の違いは語尾に表れていた。まったく同じ内容でも、言い切る人は信頼が置ける印象を与え、逆に曖昧な表現をする人は、顧客から「この人で大丈夫かな?」と不安を抱かせてしまう。
さらに興味深いのは、Bさんは「相手に否定的な反応をされた」と感じていたが、実際には自分の言動が相手をそのような反応に誘導していたという点だ。たとえば、Bさんが恐る恐る「やっぱり…それだと…難しい…ですかね?」と尋ねると、相手も「まあ、そう言われてみれば大変だね、難しいね」と答えてしまう。この会話自体が、Bさんの考えに基づく誘導質問となっており、否定的な反応を引き出してしまっているのだ。
つまり、否定的な反応は、自分自身の妄想から生まれていることが多い。この点をぜひ自覚してほしい。営業活動において、妄想が現実を歪めることが少なくない。特に、自分の能力や提案内容に自信を持てないと、無意識のうちに相手の反応を否定的に捉えてしまうことがある。
妄想例①:「強みがない」という思い込み
ありがちな妄想の一例として、「そもそも確度が低いから、どうせうまく行かない」「うちはありきたりな会社だから、コンペになった時点で採用されることはない」というものがある。こうした自己評価の低さから、「御社だと上が通してくれないんだ」「御社を通す理由がない」といった否定的な妄想が生まれ、相手の言葉としてそれを想定してしまう。
このような否定的な妄想をかき消すためには、以下のように思考を転換することが重要である。
- 本当に角度が低いのか?実は高い可能性もある。
- コンペに参加しても、採用されることは十分にあり得る。
- 自社には強みがないと感じるかもしれないが、必ず何かしらの強みは存在するはずである。
こうした肯定的な思考に切り替えることで、「強みがない」という妄想は薄れていき、営業活動に対する自信が生まれる。また、強みを再確認するために、自社の成功事例や顧客からのフィードバックを整理しておくと良い。これにより、自社の価値を再認識し、顧客に対しても自信を持って提案できるようになる。
妄想例②:「他社より劣っている」という思い込み
もう一つの妄想例として、「他社に比べて差別化ができていない」「A社の方が強いから、うちは無理」「B社の技術力には敵わないから、勝ち取れない」といった他社比較から生まれる否定的な思い込みがある。このような時には、次のような点を考慮してみてほしい。
- そもそも顧客は、そのサービス自体を求めているのか?
- 顧客が最も重要視しているのはプロフェッショナルな技術力なのか?
他社より劣っている点があるかもしれないが、自社が優れている点もあるはずであり、顧客がそれを求めている可能性もある。大切なのは、顧客に実際に聞いてみることである。ヒアリングを通じて、顧客のニーズを理解し、否定的な妄想を払拭することができる。さらに、他社との差別化ポイントを明確にするために、自社の強みを再度整理し、提案に反映させることが重要である。
まとめ:否定的な妄想を消し去ることで、営業活動に自信を持つ
今回は、否定的な妄想がどのように営業活動に影響を与えるかについて、2つの例を挙げて解説した。
「顧客に聞けない」「勝手に話を展開して、複雑な提案をしてしまう」「そもそもアプローチができない」といった営業活動における多くの課題は、否定的な妄想から生まれていることが多い。これらの妄想は、顧客とのコミュニケーションにおいて大きな障害となり得る。
各営業パーソンによって、否定的な妄想の種類や程度は異なるが、否定的な妄想を消し去るトレーニングは、誰にでも有効であり、本質的な解決策である。自分の中にある否定的な妄想を書き出し、それを打ち消すような肯定的な思考を繰り返し取り入れてほしい。このトレーニングを通じて、営業活動に対する自信を深め、顧客とのコミュニケーションをより効果的に進めることができるだろう。
最終的には、顧客からの反応をポジティブに捉えることで、自身の営業スキルも向上していく。否定的な妄想を手放し、前向きな姿勢で顧客に向き合うことで、より良い結果が得られるはずである。興味のある方は、ぜひ一度ご連絡いただきたい。