「吉川の価値は数字じゃない」――Johnson & Johnsonの上司が教えてくれた、人を動かすマネジメントの本質

「何いってんだよ。吉川の価値は数字じゃないからな。」

その言葉を聞いた瞬間、思わずウルウルしてしまった。

当時、私はJohnson & Johnsonの横浜営業所から東京本社に異動したばかりだった。2回のトップセールス表彰を経験していたものの、その年は数字が厳しく、「達成できそうにない、俺ってダメなやつだな」という気持ちで毎日を過ごしていた。

異動先で待っていた、想定外の言葉

新しい上司のNさんと営業同行している時に、半ば愚痴のように打ち明けた。

「今年は数字が厳しくて、達成できそうにないんですよね。」

返ってきた言葉は、想像と全く違った。

「全く問題ないよ。他のやつも見てきたけど、お前はよくやってる。吉川の価値は数字じゃないからな。」

それまでNさんのことを、正直なところ「いい加減な人」だと思っていた。でもその瞬間、印象がガラリと変わった。この人は、ちゃんと人を見ている、と。

なぜ、あんなに響いたのか

何がそんなに響いたのか、後から考えてみるとわかった気がする。

私はJohnson & Johnsonで営業をやっていく中で、「顧客の価値にならないことはやらない」と自分なりに決めていた。数字のためではなく、お客さんのために動く。でも周りを見ると、そこが評価される場面はほとんどなかった。

Nさんは、その部分を見ていてくれていたのだ。

数字ではなく、自分が信じてやってきたことを認められた。だから、あんなに響いたのだと思う。

「本当の関係構築」をOJTで体感した

その後も何度も営業同行をしてもらった。同行するたびに気づくことがあった。

お客さんからも、代理店さんからも、とにかくNさんへの人気がすごい。「顧客との関係構築が大事」とはよく言われることだが、正直なところ、多くの営業は数字のために関係を作っているように見えてしまう。

でもNさんは違った。関係を作るために関係を作っている、と言えばいいのか。数字の匂いが全くしないのだ。

マジかよ、これが本当の関係構築ってことか。

頭でわかっていたことが、OJTを通じて初めて体感できた瞬間だった。

マネージャーが「人を見る」ということ

今、自分が研修で受講生と向き合う時、あの同行の日々を思い出すことがある。

本人が気づいていない角度から、その人の価値を言葉にして伝えること。そして、言葉だけでなく、自分自身がそれを体現すること。

それが、人が「この人についていこう」と思う瞬間を作るのではないかと、あの頃のNさんが教えてくれた気がしている。

チームのメンバーが思うように動かない、提案が刺さらないと感じているとき、スキルの問題より先に確認すべきことがあるかもしれない。

あなたは今、メンバーの「数字以外の価値」を、言葉にして伝えているだろうか。

この記事を書いた人

吉川健一

吉川 健一

取締役/講師

エンジニア出身の提案力・ヒアリング力向上専門講師。群馬大学大学院情報工学専攻修了後、富士フイルムでITエンジニアとして従事。その後営業に転身し、Johnson & Johnsonでトップセールスを3度受賞。技術者の思考回路を知るからこそ、「なぜ提案が刺さらないのか」を構造から解説できる。登壇100回以上の研修実績をもとに、現場で再現できる対話設計をテーマに執筆中。