管理職になりたくないのは当然。だって前提が昭和のままだもん。
管理職になりたくない人たちが男女問わず、大幅に増えている。様々なデータがそれを物語っている。
「管理職になりたくない理由」をたくさん並べられ、「企業は対策をしましょう」と抽象的にまとめられ、それって難しいから「管理職はツラいよね」で終わる。という負のサイクルを終わらせたい思いから、この記事を作成している。
本記事では、なるべく「管理職になりたいくない」というテーマの本質をシンプルにし、何を変えることで、管理職に希望を持てる人が増えるのかを描いていく。この記事を読んで「管理職になりたくない人が増えなくてどうしよう」と悩んでいる人事責任者・経営者の方が、「これならウチでもできるかもしれない」と、思ってもらえたら嬉しい。
なお、ここでいう「管理職」とは「管理職になりたくない問題」に絡めているため「新任管理職」に置き換えて考えて頂けると嬉しい。
目次
管理職になりたくないのは、前提が昭和のままだから
あなたが今、「管理職になりませんか?」とオファーが来たときに、どう思うだろうか?「いや、なりますよ?だって今まで我々世代は、そうしてきたから」と思うのなら、それは危険なサインかもしれない。
管理職になりたくない理由は様々あるが、本質はシンプルだ。「管理職設計の前提が、昭和社会の仕組みを前提にしていたまま」だからだ。これについて下記の通りまとめた。
昭和(過去の前提) | 令和(現在の現実) | ズレているポイント |
---|
経済成長と昇給 「頑張れば給料が上がる」 |
経済停滞で昇給しにくい 「頑張っても給料は上がらない」 |
管理職になっても報われる保証がない |
裁量と意思決定 「管理職が現場の判断を下す」 |
データ・IT化で経営層が意思決定 「管理職は単なる指示・調整役に」 |
管理職の権限がなくなり、やる意味がない |
仕事と人生のバランス 「仕事優先、長時間労働が美徳」 |
共働き・WLB重視の時代 「仕事だけの人生は選びたくない」 |
管理職の働き方が今の時代と合わない |
時代の背景からして昭和型の管理職は「責任と裁量を持ち、報われる管理職」として、社会的・家庭的なステータスが確立されていた。しかし、令和型の管理職は「責任だけがあり、裁量もなく報われない管理職」として、社会的・家庭的なステータスも低下している。
だから、管理職設計の前提を、昭和社会から令和社会の仕組みを前提に、設計し直さなければならない。
令和型管理職の3つの前提
では、令和型管理職の新たな3つの前提変革について提案をしていく。まずは表を見てほしい。
昭和のズレた前提 | 令和の前提 | 補足 |
---|---|---|
頑張れば給料が上がる →でも今は上がらない |
報酬は役割・成果・影響力で決まる | 年功ではなく、マネジメントの「意味」と「付加価値」に対して報いる。 |
管理職は現場の判断を下す役 →でも今は経営に従って現場と調整するだけ | 管理職は“現場の翻訳者”であり、“支援者”である | 指示を伝える人ではなく、組織の摩擦を解消し、部下の力を引き出す人。 |
長時間労働が当たり前 → でも今は無理 | 管理職こそ、効率的に働き方をデザインする人 | 自分が「がむしゃら」になるのではなく、チームの“働き方”をマネジメントする役割。 |
それぞれについて説明をしていく。
1.報酬体系の見直し
「頑張っても給与が上がらない」なら、管理職には“チームの成果と影響力に見合った報酬設計”が必要だ。年功や残業代ではなく、マネジメントによる価値創出に正当な報酬が与えられる仕組みこそが、令和型の報酬体系だ。
具体的には、評価基準の見直しをすることになる。あなたの会社は何に基づいて評価をしているだろうか?例えば下記のような、評価基準や手当は、管理職に持ち合わせているだろうか?
- 部門の業績
- チームユニットの業績
- エンゲージメント、育成成果
- 担当事業の規模、責任範囲
管理職の評価は「個人としてのプレイヤー」を評価することではなく「チームとしてどう機能したか」を評価することにある。上記の点に対して、見直しの議論をするだけでも、令和型管理職の理解と、その世代へのコミュニケーションが近づくだろう。
2.管理職の役割再定義
「管理職は単なる指示・調整役」から、管理職は“部下の力を引き出す支援者”として再定義すべきだ。現場を翻訳し、育成し、心理的安全をつくる役割がある。それこそが、今求められるリーダー像だ。
管理職の本質は「成果を上げる」ことではなく「チームの成果を、上げ続ける“組織”をつくること」にある。このことを上級管理職層・経営層が腹落ちしていないと、下記のようなコミュニケーションが主流になってしまう。
- 今期、数字未達だけど、大丈夫なの?
- 何か(数字が上がらない)問題はない?
- (数字を上げるために)あなたで考えていることは何かあるの?
あなたのコミュニケーションは、どうだろうか?
数字だけでは現場が見えないが、データの時代が故に、数字が明確に見えてしまうから、何かアドバイスしたくなるという話は、よく伺う。しかし、現場とのコミュニケーションを図り「チームの成果を上げ続ける“組織づくりをする責任者”」として、管理職をみて育てなければ、令和型の管理職が誕生する環境づくりが行われない。
- 部門の目標とテーマに基づいて、課や係として、どんなチームづくりをしたいんだ?
- 何かこちら側で、組織づくりに協力できることはあるか?
- あなたのチームは、会社のために何にコミットしていて、その対価として何が欲しいのか?
このようなコミュニケーションを通して、管理職の再定義を組織内で進めていくことをオススメする。弊社も管理職の意識改革の成功事例があるので、そちらもよかったら参考にしていただきたい。
3.管理職の働き方改革
管理職自身も変化の主体者とならないと、この問題は解決されない。「仕事だけの人生は選びたくない」なら、管理職は“自分とチームの働き方を整える設計者”でなければならない。
長時間労働を前提とした役割設計ではなく、限られた時間の中で成果を出すチームの在り方をリードすることが、現代の管理職の本質だ。これは昨今の人的資本経営や働き方改革の文脈ともつながる話である。
- 「なぜできないか?」ではなく「どうやったらできるか?」を考える
- 自身もチームメンバーも、仕事とプライベートも充実するために、どのようなコミュニケーションが必要か?
- 何をすることが、部下のお手本となる管理職なのか?
上記のことを考えたり行動することが、残業の削減や給料UPに後々つながってくる上に、組織の変革に大いにつながる。
経営者や人事責任者であるあなたは、このように、新任管理職が意識改革をするように動機づけをしなければならない。それが、上記の1,2によるアクションとなっていく。
令和型管理職に向かう際の3つの壁
この3つの前提を変えることを見て頂いたが、あなたは「これならできそうだ」と思えただろうか?まだ思えていなかったら、次の内容も続けて見て頂ければ嬉しい。弊社も、管理職の意識変革を提案するのだが、実際にアクションをするにあたって、躊躇するポイントがいくつかある様子を見受けられる。それは、3つの壁が存在しているからだと考えている。
1. 評価の壁:変えることを恐れてしまう
評価制度とは、組織が何を価値とするかを示す指標であり、制度そのものが行動を規定する力を持つ。にもかかわらず、「今の制度でも運用は回っている」「変えることで混乱が起きるのではないか」といった懸念から、見直しに踏み込めない企業は多い。
だが、人は評価される方向に努力を向ける。テストの出題傾向が変われば勉強方法も変わるように、評価基準を変えなければ、行動は変わらない。
まずは、管理職に期待する行動や成果を、評価項目に小さくてもよいので盛り込むことから始めてみてはどうか。評価に明記された時点で、それは“やるべきこと”となる。
2. 期間の壁:短期的には今のままが楽である
制度設計や人材育成の見直しは、即効性があるものではない。むしろ、短期的には効率が下がったように見える場合もある。よって「現状維持でも回っているのだからこのままで」と、変化を先送りにしてしまう傾向がある。
しかし、その選択を続ければ、やがて以下のような状態に直面することになる。
-
管理職になりたがる人がいない
-
中堅社員が疲弊し、離職する
-
組織に変化対応力がなくなる
中長期的に見れば、変化を避けた“今のまま”は、確実に組織の衰退を招く。将来の競争力を維持するためには、たとえ今は小さな一歩であっても、未来を見据えた設計への着手が必要である。
3. コミュニケーションの壁:世代間の前提がすれ違っている
管理職設計の見直しにおいて、最も見落とされがちなのが「世代間の前提のズレ」である。上の世代は「管理職とはこうあるべき」と昭和型の常識をベースにしており、下の世代は「今の価値観やライフスタイルに合わない」と受け入れを拒む。
そのため、「最近の若者はすぐ辞めたがる」「上の世代はアップデートされていない」といった、相互の“非難”で議論が進まなくなる。
この壁を乗り越えるためには、どちらが正しいかを決めるのではなく、「時代背景が違えば、前提も違う」という認識を持つことが重要である。
- 昭和型があったからこそ、令和型の方向性が見える
- 令和型が登場したからこそ、昭和型の良さにも気づくことができる
お互いの苦労と価値観を尊重した対話が、世代間のギャップを埋める第一歩となる。
まとめ:「管理職になりたくない問題」の前提を令和型にアップデートしよう
管理職になりたくないという声がこれほどまでに広がっているのは、若者のやる気や根性の問題ではない。問題の本質は、「管理職という役割の設計が、いまだに昭和の価値観と構造を引きずっている」という点にある。
かつての管理職は、報酬・裁量・地位に恵まれた時代にあり、長時間労働も家族の理解も“前提”として成立していた。しかし現代は、経済構造・家庭環境・労働観が大きく変化している。その変化に対して、管理職設計のアップデートが追いついていないのが実情である。
だからこそ、今、企業は「管理職の再設計」に本気で取り組まなければならない。
-
チームの成果と影響力に見合った報酬を設計する
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指示役ではなく、支援者・育成者としての役割を明確にする
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管理職自身が働き方のモデルとなるような設計にする
このような「令和型管理職」の前提が社内に根づけば、きっと「管理職になりたい」と思える人は増えていく。管理職のあり方を見直すことは、単なる一部制度の修正ではなく、企業全体の人材活用戦略を進化させる起点である。
その歩みは小さな一歩でも構わないと思っている。もしあなたが、「自社の管理職も令和型にアップデートできるかもしれない」と少しでも思えてもらえたら嬉しいし、弊社もそのために協力をしていきたいと思っているので、一度ご連絡をいただければ嬉しい。

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