「指示待ち部下」を変える!当事者意識を醸成するタイプ別アプローチ

「当事者意識を持たせる」のではなく、「当事者意識が生まれる関係性」を作るためには、部下のタイプに応じた適切なアプローチが必要である。そのためには、すべての部下に同じような関わり方をしてもうまくいかず、それぞれの特性を理解した上で、適切な働きかけを行うことが重要だ。本記事では、部下のタイプを3つに分類し、それぞれの特徴、変化のきっかけとなるポイント、効果的な声掛け法について解説する。

なお、当事者意識の定義や、当事者意識を組織文化や環境からアプローチする手法については、下記を参考にしていただければ幸いである。

3つのタイプに分類される

多様性の世の中であり、様々なタイプがいると思うかもしれないが、大体は下記の3タイプで集約される。

自身の部下をイメージしながら、自身が今まで行ってきた行動も振り返りながらら、考えてみてほしい。

簡単チェックリスト:部下のタイプを見極める

以下の質問に「はい」が多いものが、部下のタイプの傾向を示す。

1. 責任感も主体性もないタイプ

  • 指示を出さないと基本的に何もしない
  • 仕事の進捗を自分から報告することがほとんどない
  • 問題が起きても「自分には関係ない」という姿勢が見られる
  • 「○○をやってほしい」と言われても消極的な反応をする
  • ミスを指摘すると「でも〇〇が…」と他責的になりがち

2. 責任感はあるが主体性がないタイプ

  • 指示通りには動くが、自分から新しい提案はほぼしない
  • 「決まりだから」「言われたから」という理由で行動することが多い
  • ルールや手順を重視し、曖昧な判断を避けようとする
  • 失敗を極端に恐れ、さほど重要ではない細かいことが気になる
  • 「あなたはどう思う?」と聞くと、戸惑ったり答えに詰まることが多い

3. 主体性はあるが責任感がないタイプ

  • 自分のやりたいことには積極的に動くが、組織の方針には無関心
  • 仕事のやり方を自分流で進め、周囲と調整することが少ない
  • 「これって本当にやる意味あるんですか?」と組織の決定に疑問を持つ
  • 指示を出されることを嫌がり、「自由にやらせてほしい」と主張する
  • チームの成果よりも、自分の成果や評価を重視する傾向がある

タイプが混ざっている相手もいると思うが、自身の印象で構わないのでどのタイプかを決めてみてほしい。次は、それぞれのタイプの特徴・変化のきっかけとなるポイント・具体的な声掛け方法を説明する。

1. 責任感も主体性もないタイプ

特徴

  • 指示がないと動かない

  • 責任を回避しようとする

このタイプの部下は、言われたことを最低限こなすが、「自分から動く」「責任を持つ」という意識が希薄である。そのため、「なぜやらないのか?」と問い詰めるだけでは、当事者意識は育まれない。

変化のきっかけとなるポイント

  • 「やらされる感」をなくし、小さな成功体験を積ませる
  • 「あなたの役割が組織にどう影響するのか」を可視化する

いきなり大きな責任を持たせると逃げてしまうため、まずは「これならできる」という範囲で成功体験を積ませることが重要である。また、自分の役割が組織全体にどう関わるのかを理解していないケースが多いため、視覚的に示すことで意識が変わりやすい。

効果的な声掛け法

  • 「〇〇の仕事をお願いしたいんだけど、やり方で不安なことある?」
  • 「この作業、〇〇の業務にも影響があるから、ちょっと試してみてもらえないかな?」

→「指示」ではなく、「試してみる」や「一緒に考える」といった言葉を使い、安心感を与える。

2. 責任感はあるが主体性がないタイプ

特徴

  • 言われたことはきちんとこなす

  • 責任感が強く、与えられた業務はしっかりやる

このタイプの部下は、責任感があるため業務の遂行能力は高い。しかし、主体的に動くことが苦手であり、指示やルールに頼りがちである。

変化のきっかけとなるポイント

  • 自分の考えを言語化する機会を増やす
  • フィードバックの頻度を高め、安心感を与える

このタイプの部下は、失敗を恐れるあまり、指示に従うことを最優先に考える。そのため、「自分で考えて決める」ことを少しずつ経験させ、裁量の範囲を広げていくことが重要である。

効果的な声掛け法

  • 「この作業、あなたの考えでどう進めるのがいいと思う?」
  • 「仮に失敗したとしても、どうリカバリーするかも一緒に考えよう。」

「決めてもいいんだ」という安心感を与える声掛けをする。

3. 主体性はあるが責任感がないタイプ

特徴

  • 自分で考えて動く力があるが、組織へのコミットメントが低い

  • 自分の興味・関心が強く、やりたいことを優先する

このタイプの部下は、主体性があるが、組織の目標や責任に対する意識が低いため、組織との関係性が薄くなりがちである。その結果、個人プレーが増え、周囲と協力する意識が低下することが多い。

変化のきっかけとなるポイント

  • 「組織の目的」と「自分の意義」を結びつける
  • 成果だけでなく、プロセスにも目を向けさせる

個人の成長や興味を重視する傾向があるため、「組織の目的」と「自分の役割」を結びつけることが鍵となる。

効果的な声掛け法

  • 「あなたの強みを活かせるプロジェクトがあるんだけど、一緒に考えてみない?」
  • 「チームとしてこの目標を達成するために、あなたならどう動く?」

「あなたの能力を活かす場がある」というメッセージを伝えることで、組織との関わりを強める

まとめ

上記のように、部下のタイプによって、適切な関わり方は異なる。

部下のタイプ 主体性 責任感 キーポイント
どちらもないタイプ 低い 低い 小さな成功体験を積ませる
責任感タイプ 低い 高い 少しずつ裁量を広げ、決定権を与える
主体性タイプ 高い 低い 組織の目的と自分の意義を結びつける

「当事者意識がない」と一括りにするのではなく、部下の特性を見極め、それぞれに合ったアプローチを取ることが、組織全体の当事者意識を高める第一歩となる。

しかし、上記のようなアプローチを定期的に行うには、今まで「指示する」仕事しかしていなかった管理職が「観察する」仕事をしなければならないため、実はとても根気がいる。そのためには、管理職の意識改革が組織成長の鍵を握ることも忘れてはならない。具体的な意識改革の方法については、こちらの記事・事例を参考にしてほしい。