経営者にコーチングは必要か?|コンサル・研修との違いを徹底比較
経営者として会社を成長させたい。しかし、どこかで停滞を感じている。売上の伸び悩み、人材の流出、未来への不安。もしかしたら、経営者であるあなたは「何かを変えなければならない」と思いつつも、どのツールを活用するのが正しいのか、決めかねているのではないか?
コーチングは、ただ話を聞いてもらうだけのものではない。あなたの経営戦略に「他社との差別化」という視点を持ち込み、持続的な成長を促進する手段だ。しかし、コーチングが「本当に必要か?」を考えずに、導入するのは無駄になる可能性もある。本記事では、コーチングを活用すべきか? それとも他の手段の方が適しているのか? を徹底的に考えていく。
目次
今の課題は何か?
まずは、課題の特定をしていきたい。今の、貴社の課題はなんだろうか。よく、経営者へのコーチングで伺う悩みを、下記に記載した。もちろん、あくまで、「一般的な課題」にすぎないので、自分自身で、何が具体的な課題なのかを考えるきっかけとしてみてもらえたら嬉しい。
売上が伸び悩んでいる
- 自社の差別性・独自性が社内に浸透していない。
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新規顧客開拓が進んでいない(開拓先はあるはずなのに)。
離職率が増えた
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社員のエンゲージメントが低下し、組織が安定しない。
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自分のリーダーシップに問題があるのでは?と不安を感じている。
- 福利厚生など、制度に関しては同業他社と比較しても引け目を取らないのに、同業他社と比べても離職率が多い
5年後、10年後の会社への危機感がある
- 経営者自身が5年後には70を越え、後継者を考えなければならない
- 組織に文化・DNAを残したい
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DXやAIなど、新しい潮流に対応できていない。
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今のやり方で生き残れるのか確信が持てない。
この課題を解決する手段は、コーチング以外でも良いのか?
課題感が具体化されているのであれば、コーチングとそれ以外の手段を見比べて考えてみることをおすすめする。課題解決のための手段は多岐にわたっており、下記以外にも存在するが、投資対効果として、コーチングと比較されやすい手段を出した。比較表を作成したので、参考にしていただけると嬉しい。
手段 | メリット | デメリット |
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コーチング | 経営者の思考・意思決定を強化し、成長戦略を「自分で策定できるようになる」 | 効果を実感するまで時間がかかる |
コンサルティング | 外部の専門家が戦略を策定し、方向性を示してくれる | 経営者自身の意思決定能力やリーダーシップは成長しにくい |
社外研修 | 社内ナレッジには存在しないスキルを体系的に学べる |
具体的な経営課題や経営者自身の成長にフォーカスした実践的なアプローチが不足しがち |
社内研修 | 社内の視点を活かした研修が可能 | 視点が偏りやすく、経営者自身が「自分の思考を客観視する機会」が得にくい |
顧問サービス | 長期的な支援や、売上につながる紹介を受けられる | 受け身になりやすく、経営者自身の成長を促す仕組みがない(コンサルティングに近い) |
SaaS | データ活用やタレントマネジメントの自動化が可能 | 経営者自身の成長には直結しにくい |
採用 | 優秀な人材を採用すれば組織課題の一部が解決できる | 経営者のリーダーシップが向上しなければ、組織の成長は長続きしない |
コーチングの差別性は、「意思決定の質」の向上にある。当然意思決定は、すべての施策の判断基準となるため、会社の土台が大きくなるようなイメージだろう。そのため、あなた自身が「自分自身の成長」を強く望んでいるのなら、コーチングは良い手段となり得るかもしれない。
タイトルにもあるコンサル・研修との違いについてだが、コンサルティングも研修も自社(自身)には持っていない、外部のナレッジを提供してもらえる点が、大きな良さだろう。これは、ChatGPTのような、良質な「集約情報」ではなく、知見を持った方の「解析」を聞ける点が重宝される。
経営者は、意思決定のための情報収集には余念がなく、精度を高めている。そのため、外部ナレッジを吸収することで、一定の気付きは得られるだろうし、自身に成長意識がある方ならば、コンサルや外部研修に、おんぶにだっこというような事にはならないはずだ。その意味で、新たな知見や自分の知らない領域の情報をインプットしなければならない場合は、コンサルや外部研修をおすすめする。
しかし、「無意識に決めている意思決定の基準」には、気付けないので、どうにも抗えない。
「何十年やっているけれども、どうしてもコレができていない。色々と工夫はしているんだけれども、中々成功しない」といった悩みには、コーチングはおすすめだ。デリゲーションが良い例だろう。ネクストベンチ(後継者)を育成するにあたり、「自身の役割に徹底し、それ以外の役割については、相手を信頼して譲る」ということが、人間は誰しも苦手だ。これは外部の知見を取り入れても、自身の意思決定や人間関係のイメージが大きく影響するので、コーチングを通して洞察していく必要がある。
経営者向けコーチングの特徴
では、経営者向けコーチングの特徴とはどのようなものにあるのか。基本的に個人向けのコーチングと、手法や質問の構造は変わらないと私自身は思っている。個人向けも経営者向けも、行うサポートは「悩み・課題の本質を自ら発見して、解決のきっかけを自らつくり、解決に向けて自ら実践すること」なのだが、最も大きく違うことは「自身の役割」が異なるので、経営者には、経営者の役割に沿った質問を展開する必要があるところだ。
そして、経営者の悩みの最たるものは「意思決定の質」に当たる。なぜならば、経営者は「決める係」だからだ。
「決める係」がいつもやっている行為・行動は「決めること」なので、それに悩むのは当然であり、「決め方(決めるまでのプロセス・決定の基準など)」にも、こだわりと偏りがある。そしてそれが、良い方向にも悪い方向にも傾くので、調整することで、意思決定の質は向上する。
以下は、そのような内容を簡易的にまとめている。
エグゼクティブコーチングの特徴
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持続可能な成長戦略を共に策定し、経営者がリーダーシップを強化しながら実行する。
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経営者の「意思決定の質」を高め、競争優位性の源泉となる意思決定を可能にする。
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企業文化を強化し、エンゲージメントの高い組織をつくる。
エグゼクティブコーチングが生み出す成果
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短期的な効果 → 意思決定スピードの向上、ストレスの軽減
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中期的な効果 → 組織のエンゲージメント向上、離職率の低下
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長期的な効果 → 企業の持続的成長と競争優位性の確立
更に詳しい内容を知りたい場合は、こちらの記事も参考にしていただけると嬉しい。
また、意思決定の質が向上することで、ROI指標として下記3つの効果がある。
業績向上に繋がる3つのROI指標
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意思決定の質向上 → 事業成長率の向上。エグゼクティブコーチングを導入した企業の経常利益成長率は10.6%、未導入企業の1.2%に比べ約8.8倍の成長を遂げている。(出典:株式会社コーチ・エィ)
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エンゲージメント向上 → 離職率低下・採用コスト削減。コーチング導入後、従業員のエンゲージメントスコアが21%向上。(出典:Gallup – State of the Global Workplace) 離職率の低下により、採用・研修コストが最大40%削減した。
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リーダーシップ強化 → 生産性向上・売上向上。コーチングを受けたリーダーの戦略的プランニング能力が16%向上した。(出典:BetterUp – The ROI of Coaching)
実際の活用事例
ここからは、実際の活用事例を紹介する。世界的に有名な経営者も下記のような活用をしている。
エリック・シュミット(Google元CEO):コーチングは「誰にでも必要」
Googleの元CEOであるエリック・シュミットは、エグゼクティブコーチングの重要性を強く支持している。彼は、自身の著書『How Google Works』の中で、コーチングが経営判断に与えた影響について述べている。
コーチングの導入背景
エリック・シュミットは、GoogleのCEOに就任した際、当初はコーチの必要性を感じていなかった。しかし、投資家でありAppleの元役員でもあるジョン・ドーア(John Doerr)から、「どれだけ成功している経営者でもコーチが必要だ」と助言を受け、ビル・キャンベル(Bill Campbell)をエグゼクティブコーチとして迎えた。
コーチングの効果
- 意思決定の精度向上
経営者としての決断を下す際、客観的な視点を持つコーチとの対話を通じて、より冷静かつ論理的に考えることができるようになった。 - リーダーシップの向上
社員との関わり方、組織内の信頼構築、適切なフィードバックの提供方法などについて学び、Googleの文化を形成する上での重要な役割を果たした。 - 自己認識の深化
自身の強みや課題を明確にし、成長し続けるための具体的なアクションを実践できるようになった。
エリック・シュミットは、コーチングを受けた経験から「どんなに優れた経営者であっても、外部の視点を取り入れ、成長を続けるためにはコーチが必要である」と断言している。
2. ジェフ・ベゾス(Amazon創業者):自己認識の向上と意思決定の最適化
Amazonの創業者であり、世界有数の企業を築き上げたジェフ・ベゾスも、エグゼクティブコーチングの価値を認識し、積極的に活用してきた。
コーチングの導入背景
Amazonは急成長を遂げる中で、事業の多角化やグローバル展開に直面していた。ベゾスは、リーダーとしての自己認識を深め、より効果的な意思決定を行うためにコーチングを導入した。
コーチングの効果
- 第三者の意見を活用した意思決定
重要な経営判断を行う際に、コーチの客観的な視点を取り入れ、より多角的な分析を行うようになった。これにより、短期的な成果だけでなく、長期的な視点での戦略立案が可能になった。 - 自己認識の向上
リーダーとしての影響力や自身の判断基準を再評価することで、組織全体の成長につながる意思決定ができるようになった。 - リーダーシップの変革
従来のトップダウン型のリーダーシップだけでなく、よりオープンで柔軟なリーダーシップスタイルを取り入れることで、社員の自主性を引き出すマネジメントへと進化した。
ベゾスは、「企業の成長は、経営者自身の成長と直結している」とし、コーチングを通じた自己成長の重要性を強調している。
3. スティーブ・ジョブズ(Apple創業者):リーダーシップと組織文化の強化
Appleの創業者であり、革新的な製品を世に送り出したスティーブ・ジョブズも、エグゼクティブコーチングを活用した経営者の一人である。
コーチングの導入背景
ジョブズは、若き起業家としてAppleを創業したものの、社内の対立やマネジメントの課題によって1985年にAppleを追放された。その後、自身の経営手法を見直し、NextやPixarを率いる中でコーチングを活用し、リーダーシップを大きく変化させた。
コーチングの効果
- リーダーシップスタイルの変化
当初は独裁的なリーダーシップスタイルを取っていたが、コーチングを通じてチームとの信頼関係を築くことの重要性を理解し、よりオープンなリーダーへと成長した。 - 組織文化の強化
Appleに復帰後、シンプルかつ強いビジョンを持つ組織文化を確立し、社員のモチベーションを高める仕組みを作った。 - クリエイティブな意思決定の向上
コーチングを通じて、他者のアイデアを受け入れる柔軟性を持つようになり、イノベーションを生み出す組織環境を作り上げた。
ジョブズは、「優れたリーダーは、他者の才能を最大限に引き出すことができる」と述べており、コーチングを通じたリーダーシップの進化がAppleの成功につながったといえる。
また、弊社でも下記の事例があるので、参考にしてもらえたら嬉しい。
チェックリスト:あなたに経営者向けコーチングは必要か?
これまでを踏まえて、10個のチェックリストを作成した。よかったら何個当てはまるか、チェックをしてもらえると嬉しい。
□ 売上の伸び悩みがあり、新しい戦略を考えたいが、決断に迷うことが多い
□ 価格競争に巻き込まれ、利益率の低下に対する打開策を見つけられていない
□ 経営に関する相談をできる相手が少なく、客観的な意見を得たい
□ 5年後、10年後のビジョンを明確に描けていない
□ 社員のモチベーション低下が気になり、組織の活性化を図りたい
□ 意思決定のスピードを上げ、経営の機動力を高めたい
□ 優秀な人材を採用しても、組織に定着せず、育成やマネジメントに課題を感じている
□ 事業成長のために新たな市場やビジネスモデルを検討しているが、判断に自信が持てない
□ 社内のリーダー層が育っておらず、経営の負担が一人に集中している
□ 事業の多角化や新規事業の立ち上げを考えているが、どこから手をつけるべきかわからない
上記のうち、3つ以上当てはまる場合は、コーチングの導入を検討する価値があるだろう。もし、1~2つなら、他の手段(コンサル・研修・顧問)と比較検討してもよい。
あなたの課題と「エグゼクティブコーチング」がマッチしているか?
ここまでを通して、あなたの課題と解決策である「エグゼクティブコーチング」はマッチしていただろうか?改めて、以下のステップを踏みながら、自社の経営課題に最適なアプローチを選択してほしい。
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チェックリストでの振り返り
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3つ以上当てはまる場合 → コーチングの導入を検討する価値がある。
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1~2つの場合 → 他の手段(コンサル・研修・顧問など)と比較検討する。
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0の場合 → 現状は問題がないが、今後の成長戦略として選択肢に入れておく。
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経営者としての優先事項を明確にする
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直近の課題(売上向上、人材定着、リーダー育成)
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中長期的な課題(企業文化形成、後継者育成、競争優位性の確立)
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コーチング以外の手段で補えるかを再確認する。
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意思決定に向けた情報収集
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エグゼクティブ・コーチングの成功事例や失敗事例を確認する。
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具体的なコーチの選定基準を明確にする。
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そもそも、課題について解像度を高めたいのであれば、一度、無料相談という形で、弊社と壁打ちすることも可能である。気軽に連絡をいただけると嬉しい。
次のアクション
課題認識と次のアクションが決まれば、下記の流れをおすすめする。
経営者コーチング導入を検討する場合
コーチング導入のROIを想定する
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1年後にどのような成果を期待するのかを明確にする。
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KPI(離職率の改善、売上向上、意思決定スピードの向上など)を設定する。
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費用対効果を測るための指標を決める。
年間目標については、定性・定量ともに立てているだろう。その目標を達成するために、経営者コーチングに何を期待するのか整理しておくと、コーチとしても、その目標・目的に向かって話ができるので、短いコーチングの時間に、会話の発散がしにくくなる。
続いて、具体的にコーチをピックアップしていく。
エグゼクティブコーチングを提供しているコーチをリストアップする
- 実績や専門性のあるコーチを3名程度選定する。
- 各コーチの得意分野(リーダーシップ、組織変革、意思決定支援など)を確認する。
- 経営者と相性の良いコーチを探す。
ただ、ホームページだけをみても中々、得意分野を知ることは難しい(字面では得意分野・専門分野について書いてあるが、本当にそうなのか?は結局会話をしてみないと分からない)。そのため、興味があれば、次のステップを推奨する。
体験セッション・問い合わせをする(無料 / 有料)
- 体験セッションを受講し、コーチとの相性を確認する。
- セッションを通じて、具体的な課題解決の糸口を見つけられるかを評価する。
- 実際の進め方やコーチングの手法が、自社に合っているかを判断する。
これらを通して、自身にマッチする会社・コーチを探し出すことができれば嬉しい。続いて、エグゼクティブ・コーチング以外の選択肢を検討する場合は、下記のような流れを推奨する。
経営者コーチング以外の選択肢を検討する場合
コンサルティングや研修、SaaSなどの代替手段と比較する
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コンサルティング → 外部の知見を活用し、具体的な戦略策定を支援。
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研修 → 自社の課題に応じたリーダーシップ研修やマネジメントスキル向上プログラム。
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SaaS → タレントマネジメントやデータ分析を活用した組織運営の効率化。
先程の表等を参考にしながら、代替手段を比較してみると良い。こうした比較検討を繰り返すことで、自社の課題感の解像度が上がって、施策の目的がはっきりするので、KPIの設定と振り返りをしやすくなる。
今すぐ導入しない場合でも、再検討のタイミングを決める
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半年後・1年後に経営課題の進捗を見直す。
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企業の成長フェーズに応じて、適切なタイミングで導入を検討する。
これは、通常行っていることではあると思うが、施策目的・実際の施策、その結果を振り返りを行い、目的や施策の調整をしていくことで、大目的(理念の達成や売上の達成)に近づくことになる。
まとめ
ここまで「経営者であるあなたにとって、コーチングは必要なのか?」という問いを立てて、検討をすすめてきた。簡単にまとめると下記のとおりである。
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エグゼクティブ・コーチングは経営者の意思決定の質を向上させ、組織の成長を加速させる手段の一つである。
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コーチング以外にも、コンサルティングや研修などの選択肢があり、自社の状況に応じて最適な手法を選ぶことが重要。
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導入の際は、適切なコーチの選定、ROIの設定、短期・長期的な成果の測定がカギとなる。
先程も伝えたが、とにかく経営者は「決める係」なので、その精度を上げていくことで会社全体の成長につながっていく。今回の記事があなたの悩み・課題に対して何かしら良い影響を与えることができれば嬉しい。更に、詳しく知りたい方は、下記記事も読んでいただけると嬉しい。